研究課題
基盤研究(A)
本研究は、海洋生物由来の新規天然生理活性物質を探索し、その生理・薬理活性を調べ、これによって新たな医薬、農薬、研究試薬創出のための基盤とすることを目的としている。4カ年にわたる研究の中で、様々な海洋由来の新規生理活性物質を発見し、その薬理作用を明らかにしてきた。また、薬理活性が明らかでない既知の化合物についても検討を行った。ここでは新たに明らかにした薬理活性の主なものについての知見をまとめる。1.ペクテノトキシン2(PCTX-2):ホタテ貝の中毒物質であるPCTX-2は、forcal adhesionを形成するアクチン線維に影響することなく、apical側のアクチン線維を特異的に断裂させた。アクチン重合への影響を生化学的に検討したところ、PCTX-2は隔離作用によりアクチン繊維の脱重合を生じさせた。2.ステレッタマイド類(ST):STファミリーのCaM阻害作用における構造活性相関について検討し、1)CaM阻害作用の発現にとって最も重要な官能基条件はイソプレノイド鎖-アルカロイド部位の立体配置である、2)アルカロイド部位の正電荷の増大は活性化段階に対する阻害作用を増強する、3)短いイソプレノイド鎖は「結合段階」に対する阻害作用を増強する、などを明らかにした、3.ペトロシノール:Petrosynolは、八丈島近海に生息する海綿の一種Petrosia spp.より単離精製された、ポリアセチレン鎖を骨格とする新規化合物である。petrosynolが電位依存性L型Ca^<2+>チャネルを抑制することを明らかにした。4.ゼストスポンジン:Xestosongin-Cは心筋skinned fiberで見られるIP3による収縮を特異的に抑制した。さらに、αアドレナリン受容体で増強した部分をxestosongin-Cは特異的に抑制したことから、心筋におけるIP3の生理的関与をはじめて明らかにした。さらに、肥満細胞における抗原刺激による細胞内Ca濃度上昇作用の機序についても、xestosongin-Cを用い証明できた。一方、平滑筋に対しては、電位依存性のCaならびにKチャネルを抑制し、IP3受容体以外のチャネルに作用することが明らかにされた。
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