研究課題/領域番号 |
10357014
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
滝 和郎 三重大学, 医学部, 教授 (70144368)
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研究分担者 |
小川 篤志 (株)カネカメディックス, 研究員
岩田 博夫 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (30160120)
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キーワード | 血管内治療 / 医用材料 / 脳動脈瘤 / 脳動静脈奇形 / 液体塞栓物質 / 動脈硬化 / ステント / アルガトロバン |
研究概要 |
脳動脈瘤、動静脈奇形塞栓用液体材料 シアノアクリレート系塞栓用液体物質は側鎖のアルキル基の長さが長いほど接着性は低くなる。脳血管内手術において一般的に用いられている側鎖がn-ブチル基のn-ブチルシアノアクリル酸(NBCA)は強い接着性をもち、これを注入するカテーテルと血管とが接着する危険性がある。そこで、接着性を低くするため側鎖をイソステアリル基としたイソステアリルシアノアクリル酸(ISCA)を合成し、硬化時間、粘性、接着性など物性を検討した。ISCA単独では接着性は非常に低いものの、硬化時間が長く、粘性が高いという問題点が明らかになった。そこで、NBCAと混合することにより、硬化時間は短縮され、粘性も低くなり、接着性も低いままであった。マイクロカテーテルをウサギの腎動脈に留置しISCAを注入したところ、操作性には問題なく十分な塞栓効果が得られた。 表面被覆血管内ステント 冠動脈や頚動脈の動脈硬化性病変に対するステント留置後の再狭窄は主に新生内膜の肥厚が原因と考えられているが、その一因として術後早期にステントストラットへ血小板やトロンビンが集積することにより平滑筋細胞の過剰な増殖が惹起されることが知られている。そこで、再狭窄予防目的で選択的抗トロンビン剤であるアルガトロバンを徐放するステントを試作した。まずバルーン拡張型のステンレス製のステント(長さ3cm、拡張後3mm径)にアルガトロバンを含有した乳酸カプロラクトンをコーティングたが、不安定で剥がれやすいことが明らかとなったため、アルガトロバンを含有したポリウレタンをコーティングしたステントを試作したところ、高速液体クロマトグラフィーにてこのステントではアルガトロバンは約1週間かけて徐放されることが確認できた。ウサギの総頚動脈にアルガトロバンステントとコントロールステントを留置し24時間後に摘出し、手術用顕微鏡および走査電子顕微鏡にて観察すると、コントロール群では著明な血栓形成が見られたのに対し、アルガトロバン群ではほとんど血栓は認められなかった。次に、4週間後、ステントを留置した総頚動脈は両群ともすべて開通しており、組織学的には全例新生内膜を認めた。新生内膜の厚さの平均値はアルガトロバン群が64.4μm、コントロール群が50.7μmと、統計学的に有意差はないが、むしろアルガトロバン群で新生内膜の肥厚を認めた。
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