培養シュワン細胞を用いた人工移植片開発による視神経再生とその機能解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10357015
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 安達 惠美子 千葉大学, 医学部・眼科学, 教授 (60009496)
• 研究分担者: 出沢 真理 千葉大学, 医学部・眼科学, 助手 (50272323) ; 溝田 淳 千葉大学, 医学部・眼科学, 講師 (10239262) ; 藤本 尚也 千葉大学, 医学部・眼科学, 講師 (10199375)
• キーワード: 視神経 / 再生 / 移植 / シュワン細胞 / 神経成長因子 / 細胞外基質

研究概要

本研究においては、末梢神経に含まれるシュワン細胞には視神経再生の促進作用があることを利用して、培養シュワン細胞に遺伝子操作等を加えて人工移植片を作成ののち損傷視神経に移植し、形態学的・電気生理学的に再生・生存を評価することを本研究の目的とする.
現在、ラット新生仔の後根神経節を用いてシュワン細胞の単離培養を行い、抗S-100タンパク抗体等を用いてシュワン細胞であることを確認した.これらの培養シュワン細胞に種々の操作を加えて人工移植片を作成・移植し、人為的な環境によって視神経の再生が誘導可能であるかを試みた.
移植片として以下6種類のものを作成し、dilによる逆行性標識で再生した網膜神経節細胞数を求めた.1) Matrigelのみ;2)Matrigelとシュワン細胞;3)Matrigel、シュワン細胞とNGF;4)Matrigel、シュワン細胞とNT-4;5)Matrigel,シュワン細胞とBDNF;6)Matrigel、シュヮン細胞、BDNFとNT-4を各々50ng/ml濃度で加え、硝子体にBDNFを50ng/lml濃度で注入する.得られた結果は、1)では移植片内への再生がほとんど見られず、2)では10%の神経節細胞が標識された.3)-5)の成長因子一群を移植片内に投与したものでは20-25%前後であり、さらに人工移植片に加えて硝子体にBDNFを加えたものでは30%と高い再生・生存率を認めた.
移植片内ではシュワン細胞と接触した再生線維が電顕で認められ、再生関連分子GAP-43,細胞接着分子L1・NCAM、ミエリン蛋白MAGなどの分子の発現が免疫組織化学にて見られた.これらのことより培養シュワン細胞を用いた人為的な環境であっても視神経の再生誘導が可能であることが示唆される.

研究成果

• [文献書誌] Dezawa,M.,et al.: "Glial cells in degeneratiog and regenerating optic nerve of the adult rat." Brain Research Bulletin. (in press).
• [文献書誌] Dezawa,M.,et al.: "Putative gap junctional communication between axon and regenerating Schwann cells during mammalian peripheral nerve regeneration." Neuroscience. 85. 663-667 (1998)
• [文献書誌] Dezawa,M.,et al: "Effects of light and dark environment on regeneration of carp optic nerves." Experimental Eye Research. 66. 681-684 (1998)
• [文献書誌] Mori M,et al.: "Haewophilus influenza has a GM1 gecngli oside-lilce structure and elicits guillan-Barre syndrome" Neurology. (in Press).
• [文献書誌] Dezawa M.: "Role of Schwann alls in retinal ganglion cell axon regeneration" Progress in Retival and Eye Research. (in Press).
• [文献書誌] 出沢真理・根岸久也: "視神経移植の現状と問題点" 眼科診療プラクティス.文光堂, 6 (1999)