地球大気環境問題の複雑な現象を解明するため、対流圏大気の風向・風速、温度、湿度の気象要素の三次元空間分布の遠隔計測が可能な気象要素観測ライダー〔レーザーレーダー〕システムの研究開発が必要とされている。そこで、本研究では、最近進歩の著しい全固体化レーザーを用いて小型・軽量化を行い、自動観測の可能な新しい高機能リモートセンシングシステムを開発し、新しい大気計測装置としての実用性を示すことを目的とする。 平成10年度では、主にシステムの設計と主要な構成素子であるレーザーと分光検出部の研究を中心に行ったが、その進行状況は次の通りである。 (1)ライダーシステム仕様の基本設計 風測定のため直接検波方式のドップラーライダーと気温測定用の回転ラマンライダー、及び湿度測定のための振動ラマン散乱ライダーシステムのパラメーターを決定し、動作特性の解析によりシステム設計を行った。 (2)Nd:YAGレーザーの周波数高安定化と多チャンネル分光部の設計、製作 単一周波数のLD励起のNd:YAG固体レーザーの設計試作を行い、複雑なインジョクションシーダを使用しないリング共振器による進行波型レーザーを開発した。その結果、周波数安定度SMHz以下の高安定で平均出力3W以上のスパル動作の小型、高効率固体レーザーが実現された。また高分解フィルターとしてファブリーペロー干渉計及び回折格子を用いて4チャンネルの高分解能力分光検出部の製作を行った。 (3)ライダー光学部の組立てと基礎実験 以上の素子を用いて小型で移動型のライダーシステムを構成した。また、室内における動作実験により光学系の基本動作を検討して、速度の測定が誤差1m/s以下で測定可能なことが確認された。
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