クロラムブシル誘導により得られたG1世代マウスについて一般的なランダムスクリーニングによって検出した突然変異体について詳細な表現型解析を行った。G2世代、G3世代を越えて遺伝性が確認できたものは、変異系統番号CHL0106の低血糖を示す変異と変異系統番号CHL0225の出血時間短縮傾向を示す変異の2系統であった。これらの系統については、さらに詳細な表現型解析を行った。出血時間短縮傾向マウスにおいては、血小板の機能と産生量を調べるため血小板凝集能と血小板数を、また、血液凝固カスケードの異常については血液凝固時間(活性化部分トロンボプラスチン時間、プロトロンビン時間)を、さらに、抗凝固因子の異常を調べるためにフィブリモノマー複合体量、アンチトロンビン-トロシビン複合体量を測定した。これに加えて抗凝固因子であるプロテインC、アンチトロンビンIII、およびプラスミノーゲンの生物活性について調べた。しかし、いずれのパラメーターも出血時間との相関は認められなかった。以上の結果から、本変異マウスは、既知の凝固因子、抗凝固因子、および血小板機能とは異なる遺伝経路の機序の異常によってその表現型が誘導されているものと推定された。一方、低血糖マウスについては、グルコースオキシターゼ法による血糖値を指標に表現型解析を行った。その結果、G5世代まで血糖値に大きなばらつきが認められた。この系統については既存の糖尿病関連遺伝子(インスリン遺伝子もしくは抵抗性遺伝子)など遺伝解析はまだ実施していない。
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