研究概要 |
次世代眼内レンズの作製を目指して,研究を進めている。この目的のため,i)摘出レンズ表面の劣化状況およびタンパク質沈着に関する評価と防止手法の開発,ii)眼内レンズにおけるグリスニング現象の解明,iii)眼内レンズ用弾性材料の開発に取り組んでいる。 i)に関しては,まず昨年度までに引き続き,摘出眼内レンズを全国の医療機関より収集し,顕微赤外分光分析,光電子分光分析等によりその表面分析を系統的に進めている。また,タンパク質の吸着しない表面を目指して,申請備品であるLB膜製膜装置を用いて材料表面の疎水化,超撥水化を行い,ハイドロゲルなどに用いられる水溶性高分子であっても,ポリテトラフルオロエチレン以上の撥水性を付与することに成功した。この点に関して,一部成果をInternational Journal of Adhesion and Adhesives誌に学術論文として発表した。現在,申請備品である高速液体クロマトグラフを用いることにより,タンパク質の分離・分析を引き続き進めている。 ii)に関しては,眼内レンズの中に水泡が発生し,透明性が失われる現象(グリスニング現象)について検討を行い,眼球の温度変化がその成因であることを見出した。この点に関しては,近く学術発表予定である。 iii)に関しては,眼内レンズとして高分子ハイドロゲルに注目し,生体適合性,安全性に優れ,かつ微小な外部刺激により正確に,しかも再現性よく応答する弾性材料の開発を進めている。 従って,目下のところ,目的に向かって,研究は着実に進歩している。
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