研究課題
基盤研究(B)
スギ花粉症飛散時期に小児科外来を受診した患児にアンケート調査を施行したところ、スギ花粉症があると答えた患児のうち26.9%に気管支喘息の症状の悪化を認め、41.2%にアトピー性皮膚炎の悪化がみられた。またスギ花粉に対する予防についての検討では、マスクを着用すると答えた者は35.7%に過ぎず、何も対策を講じていないと答えた者が46.7%と高かった。京都・滋賀の小中学生56108人を対象とした大規模疫学調査で、学童期のスギ花粉症の有症率は5.2%であり、年齢と共に上昇する傾向が認められた。誕生季節別の検討では秋生まれにスギ花粉症の有症率が高い傾向を認めた。農村部と都市部でスギ花粉症の有症率を比較すると都市部で多い傾向を認め、大気汚染をはじめとする都市環境がスギ花粉症の発症に影響を与えている可能性が示唆された。アトピー性皮膚炎および気管支喘息の有症者について合併するスギ花粉症の有無による重症度の検討を行うと、アトピー性皮膚炎においてのみスギ花粉症合併例で有意に重症例が多く、スギ花粉症またはスギ花粉感作がアトピー性皮膚炎の病態に影響を与えている可能性があると考えられた。スギ花粉と気道過敏性の関係を検討する目的で、スギ特異的IgE抗体(RAST)がクラス3以上の患児に対しアストグラフで呼吸抵抗を測定したところ、スギ飛散時期には非飛散時期に比べ初期抵抗が有意に高く、気道過敏性に影響を与えているものと思われた。小児スギ花粉症の治療の主体は薬物療法であるが、スギ花粉飛散時期では下鼻甲介の腫脹が強く、局所ステロイドを使用しても鼻呼吸が困難な重症例がある。今回このような難治例に対しCO_2レーザーによる下鼻甲介粘膜焼灼術を試み治療効果を検討した。対象となったのは9~15歳のスギ花粉症患児9名で、スギ花粉飛散前の冬休みの時期にCO_2レーザー治療を行った。1シーズン目の改善率は、重症度89%、鼻閉100%、くしゃみ発作78%、鼻汁78%、症状薬物スコア78%と良好であった。2シーズン目まで観察できた6例については1シーズン目の改善率より低下せず改善率は良好であったが、手術後1年を経過するとスギ誘発テストの陽性度が増したり、好塩基細胞数の増加がみられ、長期的な治療効果についてさらなる検討が必要と思われた。手術時間は30分前後であり、術中出血もほとんどなく、痛みその他の副作用も認めなかった。今後レーザーの出力を調整しながらさらなる検討を加えていく予定である。
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アレルギー 51・1
ページ: 15-19
アレルギー・免疫 8・2
ページ: 71-75
小児耳鼻咽喉科学会雑誌 22・1
ページ: 34-37