研究課題
本研究の目的は、「環境」・「情報」・「生命」という、現代の哲学研究において頻繁に言及されながら、それらを統一的に把握する概念装置をいまだわれわれが手にしていない基本的諸観念について、より明確な概念規定を施すための基礎的研究を行なうことにあった。これらの観念についての全面的かつ包括的な特徴付けを一挙に果たすことは、当初より困難がみこまれたので、本研究においては、環境という観念を情報という概念を通じて捉え直す作業と、生命という観念を情報という概念を介して述べ直す仕事とを平行して進めていくことを通じて、「環境」と「生命」の両概念の相互関係を解明して行きつつ、従来の研究において明瞭であったとは言い難い「情報」観念の哲学的含意を明確化することにつとめた。前年度に行なわれた、坂井・新田による生命倫理学関連の研究成果、中澤による環境倫理学に関わる研究成果、山田・中川による認知科学に関係する研究成果、石原による現象学・解釈学研究の成果をふまえて、一方では、石原、中川、中澤が、環境概念を情報概念を媒介して捉え直す作業に着手し、他方では、新田、花井、山田は、情報概念を通じて生命概念を把握し直す作業を行なった。また、高幣は、生命倫理学と環境倫理学の諸課題を、現代の社会理論における問題設定を参照しつつ整理した。坂井と田中は、これらの作業の成果を随時閲覧して、相互の調整を図り、作業が一定の段階に進んだところで、各々の成果を代表者・分担者全員で検討し直し、生命概念と環境概念とを照合するという課題を念頭に置きつつ、研究の不十分な部分を相互に指摘して、再び各班による作業にはいるという過程を数回繰り返した上で、坂井が中心となって、研究成果をとりまとめた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (5件)
