研究課題/領域番号 |
10410006
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
細田 典明 北海道大学, 文学部, 助教授 (00181503)
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研究分担者 |
沼田 一郎 北海道大学, 文学部, 助手 (20261258)
吉水 清孝 北海道大学, 文学部, 助教授 (20271835)
藤井 教公 北海道大学, 文学部, 教授 (70238525)
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キーワード | ウパニシャッド / 原始仏教 / 『ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド』 / 『ダンマパダ』 / 出家 / 在家 / 木の比喩 / 知恵文学 |
研究概要 |
本年度は出家の問題を中心に、昨年度に引き続いて原始仏典の中から『ダンマパダ』を取り上げ、『ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド』との類似が指摘されている箇所を検討した。『ダンマパダ』は仏教以外のインド思想・宗教文献と、語句や表現の上で共通もしくは類似する平行句が多く見いだされ、古ウパニシャッドから原始仏教に至る時代の思想・宗教を伝える古代インドの知恵文学の伝統として捉えうるものである。その中で、『ブリハッド・アーラニヤカ・ウパニシャッド』と類似した「樹の比喩」を有する『ダンマパダ』第338偈は「渇愛品」に収められ、輪廻の原因が欲望にあり、煩悩を根こそぎ断たなければ、人間は輪廻を繰り返すことを説いている。そして、『ダンマパダ』各章の構成を他の伝承とも比較してみるならば、比丘と理想のバラモンが重要な主題であり、ヤージュニャヴァルキヤが比丘行を説き、真のバラモンとは何かを説いていることと軌を一にしている。 また、貪欲をターラ樹に譬え、根こそぎ断ずべきことは定型句として阿含・ニカーヤの随所に知られる。四阿含と四ニカーヤの教説は緻密な教理に裏付けされ構成されているが、『ダンマパダ』の偈は阿含・ニカーヤに直接引用されるばかりではなく、その内容が素材となっている可能性が考えられる。すなわち、「樹の比喩」を中心とした『ダンマパダ』の一連の偈の意味内容が、パーリ『相応部』因縁相応の第六「樹品」において、縁起説と関連して解釈されているから、この経では渇愛から始まる五支縁起を説くことが推測される。この点は、対応する『雑阿含経』因縁相応と梵文因縁相応についても、同様に支分の少ない縁起説によってパーリ「樹品」に対応する経が構成されている。さらに「樹の比喩」について『マハーバーラタ』や『迦葉品』の類句等を検討することも、叙事詩や大乗仏典にいたる問題として、重要といえる。
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