メタ環境としての都市芸術-環境美学研究-

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10410015
• 研究機関: 東京芸術大学
• 研究代表者: 井村 彰 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (70223344)
• 研究分担者: 井上 明彦 京都市立芸術大学, 美術学部, 助教授 (30232523) ; 鳥越 けい子 聖心女子大学, 文学部, 助教授 (60237162) ; 椎原 伸博 玉川大学, 文学部, 講師 (20276679) ; 利光 功 東京工芸大学, 芸術学部, 教授 (00074310) ; 武藤 三千夫 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (50015301)
• キーワード: 環境美学 / 都市芸術 / パブリック・アート / 美的環境 / 都市の美術館化 / コミュニティー・アート

研究概要

二年間の研究の初年度にあたる今年度は、研究課題の性格上、各研究分担者とも実地調査と積極的に行って都市芸術の諸相の実態把握につとめた。また、テーマに関連する展覧会や美術プロジェクトの視察等も行い、当該課題に関するさまざまな実践形態の現状を知ることもできた。これらのフィールドワークを通じて得られた情報を整理・分析するとともに、関連する文献資料の収集も行った。それらをもとに、特に環境美学の理論的観点からの批判的検討を加えるべく、研究連絡会議を開いて各研究分担者の研究状況を報告しあい、活発なディスカッションを行った。
それらの結果、現時点で当該研究課題が直面するいくつかの問題点を明確にすることができた。例えば、彫刻作品を屋外の都市空間に設置すればすなわちパブリック・アートであり、それだけで美的環境たりうるとするような「都市美術館化」といった事態である。さらには、それに対するオルタナティヴな試みとしてのコミュニティー・アートが、いわゆる所有権と結びついた近代芸術概念と矛盾するところから生じる問題などがあげられる。われわれの環境美学が19世紀的な芸術観に定位された自律性美学の乗り越えを念頭に置いていることはすでに確認済みであるが、この環境美学の構想のもとで、事例研究を通じて浮かび上がってきた具体的な問題点をいかに考えていくかが今後の課題であり、次年度はそれについて積極的に取り組んでいく予定である。

研究成果

• [文献書誌] 椎原伸博: "パブリックアート・死・所有" カリスタ(美学・芸術学研究). 5号. 25-49 (1998)
• [文献書誌] 井上明彦: "瞬間移動(『モダンde平野』参加時の作品とパフォーマンス、及びそれについての論文)" 国立国際美術館月報. 74号. 3 (1998)
• [文献書誌] Keiko Torigoe: "A Strategy for enviromental Conservation through the Concept of Soundscape in Japan" Papers presented at the conference “Stockholm,Hey Listen!"The Royal Swedish Academy of Music. 48-53 (1998)
• [文献書誌] 鳥越けい子: "山の響き(神が棲まう滝)" 確かな目. No.150. 71 (1999)
• [文献書誌] 鳥越けい子: "曼茶羅が伝える音(布橋で聴く風景)" 確かな目. No.151. 81 (1999)
• [文献書誌] 岡田三郎: "ギリシア美学の見取図 (I)" 宇都宮大学国際学部研究論集. 5号. 25-54 (1998)
• [文献書誌] 岡田三郎: "ギリシア美学の見取図 (II)" 宇都宮大学国際学部研究論集. 6号. 63-92 (1998)
• [文献書誌] 平山敬二: "シラー美学におけるユートピア的なもの" 沖縄県立芸術大学芸術文化叢書. 第1巻. 430-443 (1998)
• [文献書誌] 平山敬二: "シラー美学とボイスの思想" 慶応義塾大学アートセンター紀要・ブックレット. 第10巻(未定). (400x40) (1999)
• [文献書誌] 井上明彦: "折れる壁をめぐって-アトリエ画のプロブレマティーク-" 京都市立芸術大学研究紀要. 第43号(未定). 17 (1999)
• [文献書誌] 井村 彰: "TasteとHobby-日本における趣味概念の変容-" 第49回美学会全国大会テーマ研究報告書. (予定). 8 (1999)