研究概要 |
本研究の目的は、能動的注意(とくに視空間への能動的注意)の脳内再現様式と脳内モノアミン(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)の役割を霊長類を用いて明らかにすることにある。今回はとくに注意に最も関係すると考えられるノルアドレナリンとその受容体に注目した。 この目的のため,まず,2頭のサルに2頭のサルに,視覚探索課題(oculomotor visual search,OVS)とそのコントロール課題(視覚検出課題,oculomotor detection,OD)を訓練した。OVS課題では,サルが注視点を注視していると,一つのターゲット刺激とその周りの7つの妨害刺激(distracters)を含む刺激配列が提示される。サルは妨害物の中からターゲットを選び出し,その方向に向かってサッケードすることが要求される。このOVS課題では,妨害物の中からターゲットを選び出す過程としての能動的(選択的)注意が必要である。一方のOD課題では,ターゲットのみが提示され妨害刺激は提示されないので,能動的注意は必要とされない。 サルがこれらの課題を遂行している間に前頭連合野の局所に微量のノルアドレナリン受容体の各種阻害剤(5μg/ミリリットル,2μリットル)を注入して,課題遂行への効果を調べた。その結果,1)α2受容体阻害yohimbineの注入によって,OVS課題が特異的に障害されること;2)その障害は,妨害物への間違ったサッケードや探索時間の増加に特徴づけられること,3)POP-OUT,NON-POPOUTの両方の条件で障害されること;4)α1受容体阻害剤のprazosinやβ阻害剤のpropuranololの局所注入では何の影響も現れないこと,が分かった。 これらの結果は,α2受容体の賦活が前頭連合野における選択的注意の過程に関与すること,そして,その関与はトップダウンとボトムアップの注意の両方に対するものであることを示唆する。
|