研究概要 |
本研究は,脳の異なる部位に外傷ないし病変による損傷または発達性障害を持つ脳損傷者の概念達成不全の神経心理学的様相を,認知過程に関わる種々の心理学的機能と障害部位との関係で評価することを目的としている.このため本年度は,次の3研究を計画し実施した. 第1の研究として,概念達成障害に関わる神経心理学的評価法の開発に関する研究で,弁別移行学習課題を用いて,刺激-反応型と言語媒介型の情報処理機能の障害という側面から,刺激次元の概念達成に至るまでの学習過程を分析することにより,左右一側性の脳損傷を持つ成人の脳血管障害者の概念達成不全の特性を明らかにした.その結果,左半球損傷者の学習成績および学習過程には,右半球損傷者のそれらとは量的に劣るだけでなく,質的にも異なった様相を呈しており,それが言語媒介機能や記憶読み出し機能と関係していることが示唆された. 第2の研究は,発達性の脳障害の1つである脳性麻痺者の言語的概念達成能力を評価する前提として,彼らが評価課題に反応可能な手段を確立する必要があることから,コンピュータを利用したコミュニケーション・エイドの開発を行った.特に,彼らの概念達成を促進するためには,彼らの言語的,非言語的な理解を他者に対してどのようにフィードバックすることが重要である.本研究は,この点に着目して障害者の言語的,非言語的表出を相互に関連を付けるエイドを開発し,これによって脳性麻痺者を対象とした概念達成評価の今後の研究計画を練っていくことしている. 概念達成には視覚,記憶,動機づけ等多くの心理的機能が関わっており,上記の弁別移行学習課題以外にも多くの概念達成に関わる機能を評価する課題を開発する必要がある.このため第3の研究として,神経心理学的評価のための機能を含む概念達成課題の開発のための基礎研究と関連させたソフトウェアの開発を行った.
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