研究概要 |
本年度は研究の最終年度にあたるので,これまでの概念達成を阻害する脳損傷者の認知機能および言語機能の障害についての一連のまとめを行った。特に,今年度は,概念達成障害の神経心理学的評価研究としては,仮名特異的な読字障害を示す左利き大脳基底核損傷患者を対象として,概念達成障害の特徴についてこれまでの弁別移行学習課題を用いて検討した。その結果,概念達成障害に大脳皮質損傷のみならず大脳基底核の損傷が大きくかかわることを明らかにすることができた。さらに,認知障害を持つ脳損傷患者を認知リハビリテーションという観点から捉えることで,彼らの概念達成障害をパーソナルコンピュータを用いた概念達成課題で神経心理学的評価を行うための方法,さらに,パーソナルコンピュータを認知リハビリテーション用エイドとして具体的活用するための試みについて検討した。特に,パーソナルコンピュータによる神経心理学的評価にあったっては,刺激の呈示方法を工夫することで損傷部位に対応した認知認知の特異性が検出できる可能性が示唆された。また,携帯情報端末を利用することで,認知リハビリテーションを個人ペースで行うためのソフトウエアの開発,コンピュータ操作の困難な障害者に対する入力エイドの工夫に関する技術支援のあり方とその心理学的研究の成果についても,一定の成果をみることができた。これらについては,本年度内に6つの論文として公表した他,脳損傷者の支援技術に関する福祉情報機器とその適用に関する2001年度の現状について,こころリソースブックとして刊行した。
|