研究概要 |
本研究では,実験的場面ならびにフィールド場面における心理生物学的ストレス反応を多面的に測定するための方法論開発とこれらの反応の因子構造を明らかにすることを目的としている.とくに今年度は,大学生を対象にメンタルストレス・テストを負荷した時の実験的に引き起こされる主観的なストレスの自覚を評価することを試みた. その結果,Raven'sマトリックス課題や線分長判断(Line length judgement)課題などのメンタルストレス・テストを負荷した時,課題への集中の低下,不快なストレス,懸念といった3つの心理的ストレス次元から説明できることが明らかとなった.すなわち,第1の課題への集中因子は,エネルギーと意欲の亢進もしくは減退,無関心とか疲労など課題への注意力の増大もしくは低下を反映したもである.第2の不快なストレス因子は,否定的な気分と認知を反映したものである.第3の懸念因子は,否定的な自己認知と認知的に妨害的な侵入思考などの心配や気がかりを反映したものである.また,実験的に誘発されたこれら心理的ストレス反応の各成分とメンタルワークロード(作業負担)の自覚度との関連性については,精神的負担がエネルギー覚醒と緊張覚醒,動機づけ,注意集中,課題関連妨害思考の増加と正の相関を示すこと示すことが示された. 今後,これら心理的ストレス反応のプロフィールがメンタルストレス・テストの性質(たとえば,強度や持続時間,難易度,要求される質的内容など)によって異なってくるのかどうか,ならびに心臓血管系反応や精神神経免疫内分泌系反応とどのような関連性があるのかを明らかにすることが残された課題と云える.
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