1.4カ年計画の最終年度に当たる本年は、日系ブラジル人を中心とする外国人が集住する群馬県太田市・大泉町を対象として、外国人の子弟の教育問題に関する調査研究を行った。具体的には、(1)ブラジル人学校へ通う外国人児童・生徒と両親および教師、(2)外国人との混成保育を行う保育所に子どもを預けている日本人と外国人の両親および保育士、(3)不就学のブラジル人の子どもに対する配布アンケート調査および面接調査を実施した。 2.その結果、ブラジル人学校に通う児童・生徒は、日本の公立学校から転校した者が多いこと、しかしそれは日本の公立学校での生活に問題があったからではなく、帰国を考えている両親の意向にもとづいていること、学校や教師も帰国を前提にしてブラジル教育省認可のカリキュラムにもとづく教育を行っていること、ただし両親の願望にもかかわらず帰国それ自体が不透明なため、ブラジル人学校卒業後の進路に大きな問題が生じる可能性が高いことがわかった。 3.帰国願望は日本の保育所に子どもを預ける外国人の親にも共通していた。しかし、保育所ではとりたてて外国人であることを意識した保育を行っていない。そのため、低年齢の子どもたちが日本人との混成保育の中で次第に「日本人」化していくことを懸念して、家庭では母国の文化や言語を教えようとする傾向が強かった。 4.そうした状況の中で、当地では公立小中学校・ブラジル人学校のいずれにも通わない外国人の子どもたちも増加しているといわれ、彼らの中には働いている者もいる。ただし、われわれの調査では「不就学」と思われていた者のうち、すでに転居や帰国し、現実には、当地に居住していないケースが少なくないことがわかった。
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