組織内の昇進パターンとキャリア形成に関する日米比較研究を本格的に行うため、関連研究の文献収集、日米企業の人事データベースの整理とデータクリーニング、予備的分析に着手した。関連研究については、図書館資料だけでなく、インターネット等を通して収集できるデータについても幅広く検索した。データベースの整理とクリーニングについては、日米間で比較可能なように変数をコード化すると同時に、40年間ほどの期間にわたってデータが蓄積されているので、その期間に組織構造が何度か変革されたことを考慮し、40年間に共通な職務資格コードを作成することに努めた。さらに、米国企業データをすでに分析してきた研究者と共同で研究していく方向性を検討した。企業の人事部、資料部の担当者を面接し、ヒアリングを数回にわたり行った。 予備的分析からは、日米比較に関するいくつかの興味深い知見が発見されている。日本では、「遅い昇進パターンと選抜」が見られ、最初の役職レベルへの昇進までに10年間の最低滞留期間があり、ほとんどの社員がその後2年ほどの間に昇進する。アメリカではこれに相当する最低滞留期間はなく、上位の資格へ昇進するまでの期間にかなりのばらつきが見られる。また、年齢的にみても日本の場合は新規大卒採用がほとんどであり中途採用者の割合は1%以下であるため、昇進年齢のばらつきが小さい。これに対して、アメリカ企業では、高卒者から博士号取得者までと学歴の分散が大きく、また他の企業で働いた経験をもつ中途採用者も多く(採用時に年齢25歳以上の者の割合は55%)、昇進年齢がかなり異なる。日本企業では、女性の総合職への登用は1986年の雇用均等法適用の以後からであり、人事データがカバーする1993年までには最低滞留期問を経ていない。アメリカ企業では、総合職ラインにある社員の46%が女性であるが、男性に比べ昇進速度が遅い。
|