日米企業における昇進パターンとキャリア形成を分析することが研究課題である。そのための関連文献の収集とコンピューター・データテープに収められている人事データベースのクリーニングとコーディング作業を本年も継続して行った。本年度は米国企業のデータベースをすでに分析してきた研究者との協力を積極的に推し進め、コーディング作業、分析枠組み設定、計量分析を共同で行ってきた。日本のデータ分析については研究代表者が担当したが、米国企業のデータ分析は研究代表者だけでなく、外国の共同研究者に積極的に参加してもらった。現在共同で論文を執筆中であり、次年度はこれらの論文を関連学会などで発表していく予定である。 予備的分析から明らかになったいくつかの興味深い知見をまとめると以下のようになる。本年度は社員の出身校に関するコーディングと分析を行ったが、大卒社員全員の大学出身校を日米で比較すると、日本の会社では特定の大学に集中する傾向が確認された。上位5校で全社員の47%を占め、出身大学数も100校程度となっている。これに対して、アメリカ企業ではより広範な大学からリクルートしていることが判明している。出身大学数は600校に及び、上位5校の占有率は14%にすぎない。日本の企業では新規大卒採用がほとんどであり、中途採用者の割合は1%以下であるが、アメリカでは入社者の半分ほどは他の会社での就業経験をもつものであり、学歴構成も高卒から博士号取得者までとばらつきが大きい。さらに出身校をその大学入学難易度を示す偏差値スコアに置き換え、社員の出身校スコアがその後の昇進速度に与える分析を行うと、入学難易度の高い大学出身者が他の大学出身者に比べ、管理職への昇進速度が速いことが日米双方の企業において明らかになった。
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