研究課題
基盤研究(B)
今回の科学研究費補助金によって次の3つの研究を行った。(1)既に実施済みの「性的な仕置きを含む体罰についての実態調査」の分析及び報告書作成。(2)大阪市を対象地とした「性的虐待の実態調査」の実施。(3)児童虐待・性的虐待の犠牲者に対するカウンセリング・処遇や虐待防止教育に従事している専門家からの聞き取り調査。ここでは、(2)の「性的虐待の実態調査」の実施の概要、及び(1)の「体罰の実態調査」の分析から得られた知見の若干について述べる。(2)については、大阪市に在住の18〜54歳の女性を、住民基本台帳に基づき、区別の人口比に従って、約3.000名抽出、「性的虐待の被害の実態及びその影響」を中心としたアンケート調査を実施した。(1)については、大学・専門学校等の男女学生を対象に、「親・教師による体罰の実態」に関する調査を実施、1.034名から有効回答を得た。(1)親および/あるいは教師による体罰の経験率は75.5%に上った。(2)教師・父親・母親別の体罰の経験率は、「教師から」59.8%、「父親から」44.0%、「母親から」43.1%であった。(3)体罰を受けた時期については、「教師から」は「中学生時代」、「父親から」と「母親から」は「小学校低学年」が最も多かった。(4)体罰を受けた時の動揺の程度は「とても動揺」がいずれからの場合も60%を超えた。(5)体罰の長期的影響を訴えた者は、「父親から」の場合58.3%、「母親から」の場合53.3%、「教師から」の場合48.1%であった。(6)55人、6.6%の者が、性的意味合いを含んだ体罰(=性的虐待)を経験していた。以上から、わが国における体罰の経験率は高く、それによる動揺や影響もかなり大きいにもかかわらず、体罰を肯定的に受けとめる空気が強いことが明らかになった。
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