本調査研究は、西南日本の地域で生活するアジア系外国人妻と彼女らが抱える生活問題を把握し、そのうえで福祉サービスを含めた生活への対応策がどのようになされているかを検討するために以下のような調査研究を行った。そのひとつは、四国、九州の全県及び山陰(島根県のみ)の772市町村に対し、外国人女性の有無、出身国名等についてハガキによる郵送調査を行った。ふたつめは、郵送調査を行った市町村の中から面接調査が可能となったアジア系外国人妻の生活史、現在の生活状況を中心としたケーススタディを行った。その結果、出身国別では、フィリッピン、韓国、中国の3ヶ国が滞在者全体の過半数を占めていたが、他にはブラジル等54ヶ国の外国人妻が生活していることも判明した。結婚に至る流入のプロセスとしては、「興行ビザ」「仲介・斡旋業」「行政による斡旋」「同胞友人による呼び寄せ」などが考えられたが、4つのなかでは「興行ビザ」と「仲介・斡旋業」による入国が多く、その後、結婚に至るケースが多かった。 また、ケーススタディを行った結果、アジア系外国人妻の生活の問題点としては、「ことばの問題」及び「異文化による家族や地域での摩擦」などが多かった。一方、外国人同志のネットワークがない、NPOが存在していないという地域社会の条件も明らかになった。その結果、アジア系外国人妻を中心とした外国人女性が限られたサービスのなかで生活していくためには、コミュニティの住民が異文化に対する理解を深め、共存していくことが何よりも重要であることがあらためて確認された。また、アジア系外国人妻等がエンパワーメントするには、ソーシャルワーカーが彼女らの生活をさまざまな局面において側面的に援助することが重要であることも明らかになった。
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