研究概要 |
本研究の目的は、「寄せ場」に関する歴史的資料の検証と社会調査とによって、「寄せ場」の実態とそれが現在抱えている問題を明らかにすることです。具体的には、日本の社会構造の変動、とりわけても戦後日本の産業構造と労働市場及び家族関係の変化と、「寄せ場」の歴史的変遷過程とを関連づけ、戦後日本社会における「寄せ場」の変遷過程とその問題性とを明らかにします。また、現在の「寄せ場」が抱える問題性とその今後の方向性とを関連づけて検討することによって、必要とされる行政施策の課題を明らかにすることです。本年度は、「寄せ場」に関する歴史的資料の検証と、大阪・釜ヶ崎、名古屋・笹島、横浜・寿町、東京・山谷を中心とした参与観察調査を行いました。また,各寄せ場の周辺地区を含めたフィールド調査をあわせて行いました。その結果,各寄せ場に共通しているのは,日雇労働力供給機能が弱化していることであり,それは駅や路上手配にも見出せることが分かりました。また,首都圏の野宿者には,外国人と女性の数が増加傾向にあることも分かりました。さらに,ドヤ街でもある横浜・寿町と東京・山谷では,ドヤ居住者の大半が生活保護受給者になってきており,ドヤを住居とした生活保護が認められていない釜ヶ崎では,ドヤの空き部屋が半数近くを占めるようになってきています。それらの直接的な原因は,寄せ場を介した日雇求人の減少にありますが,その構造的な背景には,建設業における末端労働力のリストラクチュアリング,寄せ場労働者の高齢化,家族関係の変化などの要因が重層的に推積しているものと推察されます。したがって,これらの重層的な要因を現代日本社会における産業構造の転換や労働市場の再編と関連づけて考察していくことが,今後の課題として浮かび上がってきました。
|