本研究の目的は、「寄せ場」に関する歴史的資料の検証と社会調査とによって、「寄せ場」の実態とそれが現在抱えている問題を明らかにすることです。具体的には、日本の社会構造の変動、とりわけても戦後日本の産業構造と労働市場及び家族関係の変化と、「寄せ場」の歴史的変遷過程とを関連づけ、戦後日本社会における「寄せ場」の変遷過程とその問題性とを明らかにします。また、現在の「寄せ場」が抱える問題性とその今後の方向性とを関連づけて検討することによって、必要とされる行政施策の課題を探ります。 研究期間三年目に入った本年度は、「寄せ場」に関する歴史的資料の検証を行うとともに、フィールド調査を継続して行った。調査の対象地は、大阪・釜ヶ崎、名古屋・笹島、東京・山谷などの寄せ場を中心として、大阪・名古屋市内及び東京都内の繁華街・公園や河川敷などでも行った。調査方法としては、参与観察法を中心とした短期滞在型のフィールド調査を行った。さらに、データ整理・分析の作業を行うとともに、欧米のアンダークラス研究やホームレス研究などを参照し、グローバリゼーションの進行と現代日本の都市問題との関連で「寄せ場」を考察する研究視点を探りつつ、研究最終年度に向けた報告書作成の準備に入った。 また、「寄せ場」に関する歴史的資料の検証にもとづいて論文「釜ヶ崎をめぐる社会問題の構成-"第一次暴動前"篇-」を大学紀要雑誌に、これまでの研究視点・方法を検証するために論文「寄せ場/野宿者を記述すること」を学会誌に発表した。
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