研究課題/領域番号 |
10410100
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小南 一郎 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (50027554)
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研究分担者 |
矢木 毅 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (00252510)
井波 陵一 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (10144388)
金 文京 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (60127074)
濱田 麻矢 神戸大学, 文学部, 講師 (90293951)
赤松 紀彦 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (60175784)
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キーワード | 筆記小説 / 説唱文芸 / 説話人 / 自話小説 / 演義 / 話本 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、小南一郎を中心として、通俗文学の発展に欠かせない要素である中国近世の都市の諸相に注目して研究を進めた。とりわけ日常生活における風俗習慣が人々の想像力や行動をどのように刺激し、それが文学の創作や享受にどのような影響を与えたかについて考察した。赤松紀彦の「鐘馗と五鬼をめぐって」はその一環として書かれた論文であり、長い歴史をもつ鐘馗伝説が、時代の変化の中でどのように変遷を被り、また通俗文学の中でどのような役割を与えられるに至ったかを論じたものである。また金文京の「広東木魚書与金蘭会」は、語り物文芸の一種である木魚書と、広東において未婚の女性が組織した金蘭会との関わりを取り上げ、当時の女性たちが木魚書に託した夢を分析することによって、社会の理想と現実の狭間に位置する通俗文学が、日常生活の中で占める重要性を明らかにしたものである。 個別の作品等をめぐっては、井波陵一が『紅楼夢』の続編の創作方法を具体的に検証し、続編の作者はおおむね原作のストーリーを微細な部分まで掌握しながらも、悲劇的な結末を単純にハッピーエンドに置き換えようとしたため、構想力に富んだ作品を生み出すことができなかったと結論づけた。濱田麻矢は20世紀中国の文芸雑誌がもつ様々な個性を検討することを通じて、従来の通俗文学作品が現代作家に及ぼした影響について考察した。矢木毅は近世朝鮮の官僚制度を分析しながら、官僚各層における中国語の受容のあり方について比較検討を加えた。井波律子は中国の故事を題材とした明治時代の作品について、その特徴を考察した。
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