研究課題/領域番号 |
10410103
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中地 義和 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50188942)
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研究分担者 |
福田 耕介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (30292741)
塚本 昌則 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (90242081)
月村 辰雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50143342)
塩川 徹也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (00109050)
田村 毅 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90011379)
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キーワード | モデルニテ / 逆説 / ボードレール / 詩の危機 / 作者の死 / 新旧論争 / アヴァンギャルド |
研究概要 |
本研究は、フランス文学における「モダン」の価値の変遷を通時的にたどることにより、いわゆる「近代」に限られない「モダン」の研究が可能なのではないかという発想のもとに開始された。第一年目の平成10年度は、情報処理設備の充実を図り、参加者がそれぞれの専門に応じて資料体を充実させながら、各時代の「モダン」の捉え方と価値評価の諸相の分析を進めてきた。中世から大革命にいたる近代以前(月村・塩川)についても広範な基盤的作業が続けられているが、さしあたり近代以降をめぐる成果として次の二点が挙げられる。 (1) 近世以降の西洋の原理をなす「理性」の捕捉を免れる「夢」や「無意識」が、フロイド以前および同時代に、精神分析学的アブローチとは異質な形で文学者の注視の的となり、創造にその素材を提供したことは、近代の「モダン」の重要な逆説である。『ネルヴァル全集』の刊行(田村)やヴァレリー「カイエ」をめぐる仏語博士論文〔1998年11月にパリ第12大学にて審査〕(塚本)を通じて、これらの現象の文学への取り込みが、個々の作家における実存と創造行為との逼迫した緊張のなかで企てられたことが明かされつつある。 (2) 「モダン」の逆説的様相は近代詩の分野でも顕著である。定型韻文詩が崩れ、自由詩や散文詩が出現するいわゆる「詩の危機」の現象は、ボードレールとランボーに典型的に見られるように、ほとんどつねに定型の伝統への執着と裏腹である。マラルメ、ヴェルレーヌらを含め、十九世紀詩人がこのような二重性において二十世紀のモダニズムとは異なる点が、詩形と美学的内容双方の視点から解明されつつある(中地、塚本)。 前近代における「モダン」や二十世紀小説手法における「モダン」(福田)の考察を含め、新しいものの標傍がつねに伝統的なものへの執着を内包するという逆説への着銀が、次年度以降の本研究を方向づけるはずである。
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