研究課題/領域番号 |
10410105
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
川口 洋 学習院大学, 文学部, 教授 (60080412)
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研究分担者 |
大貫 敦子 学習院大学, 文学部, 教授 (70176957)
下宮 忠雄 学習院大学, 文学部, 教授 (90101592)
青木 順三 学習院大学, 文学部, 教授 (90017616)
村田 經和 学習院大学, 文学部, 教授 (10080417)
宮下 茂 学習院大学, 文学部, 教授 (30080419)
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キーワード | EUと国民国家 / 多文化主義 / 「ヨーロッパ」観の変化及び拡大 / 普遍的理念のあり方 / オーストリア / 超国家的存在であるとするEUの問題点 / アメリカ合衆国と「ヨーロッパ」 / EUによる制裁の意味 |
研究概要 |
平成10年度の研究成果を踏まえて、「ヨーロッパ」と「国民国家」の具体的問題を考察した。 (1)「ヨーロッパ」が、常に他者(例えば、「オリエント」)の存在を前提とし、そこから自己規定をしてきたという歴史的・政治的経緯の中、その「ヨーロッパ」がEU統合のプロセスでどのように変貌をとげてきたのか、新たに加盟国となった国々、また、加盟を申請している国々の文化的特性、及び、従来の「ヨーロッパ」観を揺るがす、あるいは、拡大している経緯を検証した。 (2)「国民国家」の概念に対して、多言語主義や多文化主義が有効な批判となりうるかについての検証をした。その際、EUという超国家的な理念が、しかし、各国民国家の政治体制、与党となっている政党の理念と決して無関係ではありえないであろう、齟語を生み出す可能性は大いにあるであろうという予測をたてた。それは、例えば具体的には、最近のオーストリアにおける国民党と自由党の連合政権が樹立されたことで、EUが制裁の処置を行っていることに表れていることで明確となった。そして、EU自体の理念・思想を含めた方向性と、各国家の政治的、歴史的あるいは経済的事情の折り合いの難しさは、そう簡単には解決できるものではなく、今後のEUの一つの大きな課題になるであろうことが指摘された。多文化主義とは、それぞれの文化を同等に扱い、共生を目指すものであるはずであるが、EUあるいは「ヨーロッパ」は、普遍的価値とされている理念が、実はある特定の国民国家が作り出したものであり、たとえ、地理的に「ヨーロッパ」に属する国、あるいは文化であっても、必ずしもその「普遍的価値」を共有することは困難なことであり、それが、いわゆる「新しい」国であり、分かりやすい共通項、共通理念を作り出すことで成立しているアメリカ合衆国とは違った、ヨーロッパならではの難しさなのではないことも確認、指摘した。
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