研究分担者 |
熊谷 智子 国立国語研究所, 日本語教育センター, 室長 (40207816)
相澤 正夫 国立国語研究所, 言語体系研究部, 部長 (80167767)
吉岡 泰夫 国立国語研究所, 言語変化研究部, 部長 (90200948)
筧 一彦 名古屋大学, 大学院・人間情報学研究科, 教授 (90262930)
粕谷 英樹 宇都宮大学, 工学部, 学部長 (20006240)
桐谷 滋 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90010032)
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研究概要 |
1999年4月に第1回の打ち合わせをおこなったのち,当初の予定どおり,音声科学グループとパラ言語情報記述・評価用語彙セット作成グループにわかれて研究を進めた. 音声科学グループは,昨年度に引きつづいて声質(voice quality)に関する音声科学的検をすすめた.無響室内においてパラ言語情報を指定した発話をおこない,鼻腔を通じて咽頭に挿入されたファイバースコープを介して,声帯振動映像を高速ビデオ(2700frame/s)に記録した.映像データはパラ言語情報による声帯振動様式の明瞭な変化を捉えており,「疑い」では声帯閉鎖区間の長いpressed phonationが,「落胆」では声帯閉鎖区間がほぼ存在しないbreathy phonationが観察された.これらは「中立」発話で観察されるmodal phonationと明らかに異なる振動様式であり,パラ言語情報の伝達に声帯振動様式が寄与しうることが生理学的なレベルで確認された. 上記の生理学的研究と並行して,粕谷らが開発したARX法による音声データからの声道・音源パラメータの同時推定を試みた.推定された種々の音源パラメータは,映像から測定された声帯振動パラメータを高い精度で近似しており,例えば声帯振動における閉鎖区間の指標であるopen quotientに関しては,従来から利用されているEGG装置による近似よりも,ARX法による近似の方が高精度であることが明らかとなった. 記述・評価用語彙セット作成グループは以下のよっつの研究を並行してすすめた.(1)昨年度の知覚実験に利用した音声刺激などを利用した自由記述法によるパラ言語情報記述語彙の収集.(2)小説に出現する声にかかわる形容語句の分布調査.音声の物理的特徴の記述に用いられる語彙と心理的特徴に用いられる語彙とが分離する傾向が確認された.(3)発話の丁寧さに関わる韻律的特徴と語彙的特徴の交互作用に関する知覚実験.(4)幼児の感情表現の特徴と音響量との関連についての検討. 以上の研究成果については各種関連学会で発表しており,一部は査読済研究論文として公開されている.
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