研究課題/領域番号 |
10420004
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森 英樹 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60022422)
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研究分担者 |
倉持 孝司 名古屋経済大学, 法学部, 教授 (00153370)
大久保 史郎 立命館大学, 法学部, 教授 (90066720)
小林 武 南山大学, 総合政策学部, 教授 (80103216)
永田 秀樹 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60136778)
足立 英郎 大阪電気通信大学, 工学部, 助教授 (90151076)
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キーワード | ネットワーク社会 / 市民的公共圏 / 比較憲法 / マルチメディア / NPO / 政党 / コミュニティ |
研究概要 |
本研究は、従来その自律的・社会的な性格に鑑み、国家の領域に含ましめるになじまないとして私的領域に放置されてきた政治的諸アクター(マルチメディア・NPO・政党・コミュニティなど)の活動する場を「市民的公共圏」という概念でとらえ、これを、現代国家における市民の政治的意思形成過程参加の媒介項として積極的に位置づけるという観点から、比較憲法学的に検討をくわえるものである。したがって、各国の憲法状況および各アクターについての専門研究者による共同研究が不可欠となる。最終年度にあたる今年度は、2回の合宿研究会を行い、国別・アクター別に理論的課題を検討するとともに、それらをふまえて総合的な分析も行った。 各国比較では、たとえば社会保障分野において、イギリスではブレア政権下で、ボランタリー・セクターに財政的援助を行いながら他方でアカウンタビリティを確保するという「第三の道」が模索されているのに対して、フランスでは、職業による排他的保険制度に基づく「職域的連帯」から、そこからこぼれ落ちる人々(とりわけ外国人労働者とその家族)をも包括する「国民的連帯」へと「福祉国家の再定義」が図られつつあることが明らかにされた。総論的検討では、ハーバーマスの市民的公共圏論の分析を通じて、「市民的公共圏」の形成という場合、その「公共」とは何故に「公的なもの」と位置づけることができるのか、という論点が提起され、またジェンダー分析の視点からは、そもそも「公」と「私」の二分論の再構成が必要なのではないか、との問題提起がなされた(各研究分担者の成果につき、裏面研究発表欄、参照)。 最終年度の研究成果として、現代民主主義国家に通底する公共圏をめぐる憲法問題をあまねく分析しきったとは言えないまでも、当初予定していた基本構造と今後の課題は明らかにしえたように思われる。
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