研究課題/領域番号 |
10430003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤原 正寛 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40114988)
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研究分担者 |
川越 敏司 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 講師 (80272277)
石原 秀彦 専修大学, 経済学部, 講師 (20292857)
池尾 和人 慶応義塾大学, 経済学部, 教授 (00135930)
柳川 範之 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (80255588)
堀 宣昭 九州大学, 大学院・経済学研究院, 助教授 (50304720)
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キーワード | 情報化 / 限定合理性 / 規範 / モジュール化 / ガバナンス |
研究概要 |
本年度の研究では、情報化の進展によって従来とはことなったガバナンス構造を持つ組織が発生することで社会に与える影響についていくつかの興味深い研究が行われた。ここでは、「規範による自発的協調」について例示する。 従来の経済学の研究では、公共財の供給など外部性のある問題について、社会を構成する主体によって効率的な問題解決は出来ないとされていた。これは主に、構成主体間にただ乗りしようとするインセンティブが存在するためであり、そうしたただ乗り活動を罰することが自発的な組織構造では無理であるとされていたためである。 しかし、近年の情報化技術の発達に伴い、社会の構成員間での情報共有のコストが低下することによって、自発的に公共財活動に貢献あるいはただ乗り活動を罰することができる可能性がでてきた。同時に、従来超合理性を仮定されていた意志決定主体に対して、限定合理的な意志決定主体を想定し、各主体の情報処理能力を補うために、経済学ではあまり考慮されなかった「規範」を意志決定主体の行動原理に組み込む研究も盛んに行われるようになり、組織活動について異なった方向からのアプローチが可能となった。 具体的には、自発的に貢献したいという規範を持つ人々と、そのような規範を持たない人がいる社会を考えたときに、情報化技術の進展による監視費用の低下のおかげで、ただ乗り活動を自発的に罰することが可能になるのである。これにより、自発的に貢献するという規範が社会的に成功することで、より多くの構成員に広がっていくことが期待できる。このように、情報化技術の進展によって可能になる組織活動について、今後より詳細に分析する必要があると思われる。 また、今年度はモジュール化、政府の規模、企業のガバナンスと流動性などについての研究報告も行われた。
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