研究概要 |
企業統計の間で、調査対象の範囲、調査項目の定義、結果表章の区分が相違することがデータの利用上大きな制約となる。本研究では、(ア)事業所の定義ならびに範囲の相違は自家用倉庫等の付随事業所の扱いに多く現れている(イ)従業者について派遣従業者と臨時・日雇い従業者の扱いが区々である(ウ)企業の産業格付けは統計毎に大きく相違しており、統計間でのデータの比較を困難としている等の分析結果を得ている。 企業の産業分類は事業所の産業分類に準拠して行われているため、企業レベルでの多角化の進展によって産業格付けが適当でない場合が多く出現している。企業の産業分類については各国が研究中であるが、今だ有効な分類方法を提示し得ていない。本研究では、『企業活動基本調査』にもとづく実証分析を踏まえて、格付け基準を収入額から付加価値額に変更し、さらに企業規模と専業か否かの多角化に関する情報を活用すれば、より適切な産業分類が得られるとの結果を得た。 企業行動の多角化について、事業所レベルおよび企業レベルでその効果を検討した。事業所レベルについては、1985,88,90,93年の『工業統計調査』から従業者4人以上の590,649事業所のパネルデータを作成し、製造業の範囲内での多角化が収益性と安定性に与える影響を分析した。多角化の収益性に対する有意なプラスの効果は観察されず、製造活動においては多角化を通して投入要素に範囲の経済が働いていないとの結果を得ている。企業レベルについては、1991,94,95,96年の『企業活動基本調査』から3,450企業のパネルデータを作成し、製造業を超えた多角化の実態ならびに企業活動の成果への影響を分析した。多角化は進出先と自らの産業との関連度合いに関わらず収益性を低下させ、また、リスクを減少する効果を必ずしももたらさないとの結論を得ている。
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