研究概要 |
1990年代後半期以降,日本の自動車メーカーと部品メーカーは,自動車開発コストと開発期間の大幅削減を目指して,新しい製品開発システムを構築しつつある。その主な特徴を要約すれば,(1)情報の共有化(2)CAD/CAMの本格的導入とシュミレーション技術(CAE)の積極的活用(3)サイマルテニアス・エンジニアリングの強化(4)プラットフォームの先行開発・評価の完了(5)開発技術の標準化による開発工数削減と設計変更の最少限化の実現等である。こうした新開発システムの導入によって,自動車開発コストと開発期間はおおよそ30%程度削減されつつある。今,開発期間をモデル決定から量産開始迄の期間とすると,わが国の乗用車メーカーは,かつては開発期間3年だったのがその半分の18ヵ月レベルに短縮できた。さらに現在では14〜15ヵ月,近い将来には12ヵ月迄短縮しようとしている。車の開発期間の大幅短縮を目指して,プレス金型,インジェクション金型メーカーなどの自動車開発支援型産業の技術革新も目ざましい。プレス・インジェクション型メーカーは90年代初期,型開発期間に10ヵ月を要したのが現在では4,5ヵ月迄短縮している。そのために,金型メーカーは(1)3次元CAD/CAMの本格的導入(2)高速NC工作機械の導入(3)自動車メーカーへのゲスト・エンジニア派遣(4)素材革新による簡易金型の開発等新しい取り組みが進められている。この結果,金型メーカーの中には新技術導入によって経営強化を図る部分と,切捨てられ衰退する部分のコントラストが一層明瞭になっている。こうした傾向は,他の開発支援型産業においても同様に見られる。
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