財政改革と社会保障基金

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10430019
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 持田 信樹 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20157829)
• 研究分担者: 佐々木 伯朗 東北大学, 経済学部, 助教授 (10263550) ; 永廣 顕 甲南大学, 経済学部, 助教授 (70268514) ; 岡本 英男 東京経済大学, 教授 (40133920) ; 越智 洋三 東北学院大学, 経済学部, 教授 (40094916) ; 加藤 榮一 帝京大学, 経済学部, 教授 (30005756)
• キーワード: 福祉国家 / 社会保障基金 / 公的年金 / 賦課方式 / 積立方式 / 企業年金 / 社会保険 / 国民健康保険

研究概要

(1) フランス・スウェーデンの社会保障に関するレビュー
社会保障基金の独立性、統合性が強い、フランス・スウェーデンに共同研究者を派遣し、レビューを受けた。レビューを受けた機関は、Agence Centrale de Organismes de Securite Sociale,雇用連帯省(以上フランス)、スウェーデン社会省、同大蔵省等。その結果、従来、基金の独立性が強かったフランスでも、近年、一般社会福祉税(CGS)が導入され、国家財政への依存が高まっていることが明らかになった。また帰国後、社会保障に関する政府刊行物の翻訳依頼を行った。平成11年度は、イギリス、アメリカに研究分担者を派遣する予定である。
(2) 国民健康保険制度についての国内実態調査
日本の医療保険の中核として重要な役割を果たしている国民健康保険制度につき、大都市の典型例として神戸市を取り上げ、担当セクションのヒアリング及び実態調査を行った。その結果、老人医療費の増大、小規模保険者の増大などの構造的問題を抱えていることが明らかになった。平成11年度には農村部の市町村におげる国民健康保険制度の調査を行い、医療費の地域間格差について詳しく検討する予定である。
(3) 国内研究会でのヒアリング及び社会保障関連文献の収集
上記の海外レビューと国内実態調査に備えて、専門家を研究会に招待し、知識の提供を受けた。具体的には「国民保険制度の現状と課題」(厚生省保険局)、「スウェーデンの社会保障システム」(厚生省保険局)というテーマで研究会を開き、政策担当者としての意見・問題意識を聞き、ディスカッションを行った。この結果、とくにスウェーデンにおける年金改革において確定拠出型の積立方式が部分的に導入された背景が明らかになった。この他、OECD、イギリス、アメリカ、ドイツ、韓国、日本の社会保障システムに関する最新の文献を購入し、先行研究を検討した。

研究成果

• [文献書誌] 林 健久: "地方財政と景気政策" 地方財政. 37-5. 4-12 (1998)
• [文献書誌] 加藤 榮一: "ドイツ社会保険福祉国家の動揺" 日本ドイツ学会『ドイツ研究』. 25. 20 (1998)
• [文献書誌] 岡本 英男: "ニクソン新連邦主義と補助金改革(1)" 東京経大学会誌-経済学-. 211. 59-89 (1999)
• [文献書誌] 持田 信樹: "Fiscal Federalism in Practice,the Nordic Countries and Japan" The Journal of Economics. vol.64,No.4. 55-86 (1999)
• [文献書誌] 佐々木 伯朗: "経済システムの自己組織性と財政の役割" 日本財政学会第55回大会報告集. 50-52 (1998)
• [文献書誌] 田野 慶子: "ワイマル期ドイツにおける都市電力業-ボン、デェッセルドルの市の事例を中心に-" 和洋女子大学紀要. 第39案. 23-38 (1999)
• [文献書誌] 金澤 史男: "自治体財政への警鐘" 地方自治職員研修. 31-10. 18-21 (1998)
• [文献書誌] 金澤 史男: "事業税の外形標準課税化の前提的論点-その歴史的経過-" 税研. 80号. 58-64 (1998)
• [文献書誌] 金澤 史男: "市町村合併促進と住民サービスのあり方" 都市問題. 90-3. 39-53 (1999)
• [文献書誌] 林 健久: "昭和財政史・昭和27-48年度・2・財政-政策及び制度-" 大蔵省昭和財政史室編 東洋経済新報社, 413 (1998)
• [文献書誌] 持田 信樹: "Shibata/Ihori eds,Welfare State,Public Investment and Growth" Springler Verlag, 324 (1998)