研究分担者 |
谷川 寧彦 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (60163622)
大西 匡光 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (10160566)
田畑 吉雄 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (30028047)
大屋 幸輔 大阪大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (20233281)
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研究概要 |
仁科は信用リスクの概念を精緻化し,実際のデータを用いて計測するために、代表的な資産価格理論の成果をどのように取り入れるかが出来るか,を検討した.対象となる資産の信用リスクを把握するためには,市場メカニズムのもとで整合的な価格形成を分析する資産価格理論の成果を利用することが不可欠である.また,この研究プロセスにおいて,将来の資産家価格動向を描写するために想定する確率過程の特性や限界に関して,新しい発見と指摘を提供することも追求する予定である. 田畑は,前年度に引き続き,現実の危険資産運用でしばしば用いられるインデックス・ファンドの設計問題に関する研究で,とくに,時間の経過とともに危険資産価格という情報が逐次入手できる場合の適応的なポートフォリオとインデックス・ファンドの様々な性質を導出した. 大西は,前年度に引き続きPoisson過程に従いジャンプをする幾何Brown運動に対する最適停止問題を精察した.さらに幾何Brown運動を含む拡散過程のインパルス・コントロールの基礎理論と,そのオペレーションズ・リサーチ,ファイナンス,国際金融経済学に現れる諸問題への応用についての研究を開始した.また,期待効用理論に基づく投資家のリスク回避性と、資産収益の確率優位(確率順序)に基づくリスクの変化が,最適な投資行動へ与える影響に関する比較静学についての基礎的研究を再開した. 谷川は主にマーケット・マイクロストラクチャーに関する研究を行った.ニューヨーク証券取引所では,スペシャリストという証券売買の相手方となる役割をもつ参加者が決まっている.東京証券取引所ではそのような役割を特別に与えられた参加者はおらず,指値注文の「板」がかわりに流動性を供給している.逆に指値注文を出して流動性を供給を試みる立場の投資家(ないし証券会社)からすると,指値注文の執行確率がどうなっているかが重要である.現在は指値注文の執行確率を指定し,結果をとりまとめ中である. 金融市場において利用できるデータは,統計理論や数理ファイナンスが前提としているように理想的なものではない.構築された理論を統計的に検証するには,不完全な形でしか利用できないデータの特性と,それが統計的推論へ与える影響を検討する必要があり,大屋は,こうした観点から,計量ファイナンスの見直し作業を行った.
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