研究分担者 |
松浦 良行 山口大学, 経済学部, 助教授 (70274149)
大上 慎吾 一橋大学, 大学院・国際企業戦略研究科, 助教授 (90272765)
蜂谷 豊彦 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教授 (00251645)
中野 誠 横浜市立大学, 商学部, 助教授 (00275017)
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研究概要 |
本年度は,これまでの研究の総括およびさまざまなケースへの応用を中心として研究を行い,その成果を国内外の学会等で発表した. 主な内容は次のとおりである. 1.蜂谷・松浦・中野を中心とする実証研究のまとめ. 2.三浦・大上を中心とするリスク計測モデルの構築とデータ分析のまとめ. 中でも,昨年度までは比較的独立に行われていた上記2つの研究ラインの統合が今年度の研究の中心であり,1の研究成果を2のモデルにおけるリスクファクターあるいは説明変数の選択に反映させるという形で達成されている. 市場の状態が個々の企業の財務状態に与える影響,また企業の財務状態の良否が市場に与える影響があることは明白であり,市場の変動により生じる市場リスクと,取引先の財務的困窮によって引き起こされる信用リスクは,当然のことながら不可分のものである.しかしながら,この相互依存関係をどのように明示的に表現するかということは一方で非常に難しい問題である. 「直接的アプローチ」では,市場と財務構造の関係を直接モデル化するという方法をとる.両者の関係が明示的に示されることで解釈しやすいモデルであるが,一方で,データに対するオーバー・スペシフィケーション,オーバー・パラメトライゼーションの問題や,その結果として起こる推定されたモデルの不安定さといった問題がある. 「間接的アプローチ」では,市場と財務の関係を,これらに影響を与える「観測可能な」説明変数やリスクファクターの相互依存関係でとらえていく.当研究では,さらにこの説明変数間の関係も明示的なモデルを与えるのではなく,確率的依存関係として表現するアプローチをとった.複雑な説明変数間の依存関係を多変量正規分布で表現することは現実的ではなく,したがって古典的な分散・共分散アプローチはとれない.そこで,コプラ関数による同時分布の表現や,局所線形近似によるモデル構築を試みた.株式・債券市場を中心とする市場情報と財務諸表を中心とする財務情報を取り込んだリ総合リスク計測へのビルディング・ブロックの1つとして提案していく.
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