研究課題/領域番号 |
10430030
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研究機関 | 石巻専修大学 |
研究代表者 |
豊島 義一 石巻専修大学, 経営学部, 教授 (80004191)
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研究分担者 |
大塚 裕史 石巻専修大学, 経営学部, 助教授 (50201380)
小倉 昇 筑波大学, 大学院・経営システム科学専攻, 教授 (10145352)
三好 幸治 福島大学, 経済学部, 教授 (40007406)
貴田岡 信 福島大学, 経済学部, 助教授 (80224947)
青木 雅明 青森公立大学, 経営経済学部, 助教授 (90202473)
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キーワード | 管理会計 / 標準原価計算 / 二段式標準原価計算 / 原価管理 / NEC / 日本電気 / 中山隆祐 |
研究概要 |
前年度の研究を継続して、日本電気(株)(以下NEC)における第二次世界大戦後の標準原価計算の導入に関連する資料に基づいて、わが国企業における欧米型の原価管理の導入と発展の経緯を検討した。特に管理会計システムの構築のために戦後ベルギーから派遣されたPaul J.Stoopsの作成した膨大な勧告・提案を、NECでそれまで使われていた標準原価計算に関する資料とともに検討することで、新システムの導入に伴う問題を明らかにした。 前年度の研究を継続した当年度の研究から得られた知見は、次のようなものである。すなわち、NECにおける当時の生産は、個片(piece part)と呼ばれる部品をまず生産し、次にそれを組み合わせて機器(apparatus)と呼ばれる半製品を生産し、最後に製品の生産に至るという過程をとっており、標準原価計算も、これにしたがって個片の原価管理と機器の原価管理とを分けて行う形が提唱された。そのような標準原価計算の過程では、特に個片の生産が機器の原価管理に影響を及ぼさないように、工程の完成品の引渡には、仕切原価(binding cost)と呼ばれる一種の振替原価が設定されていた。この仕切原価は各工程における活動目標として重要である。工程では、作業目標としての基準標準原価が設定される一方で、実際原価を少々上回る仕切原価を見積もり、基準標準原価と実際原価の差を原価差異として認識するとともに、仕切原価と標準原価の差を仕切原価余裕として、原価差異と仕切原価余裕の差を工場損益(shop surplus)とすることで、工程の管理を行うことが検討から明らかにされた。このような仕切原価の提案がNECの二段式標準原価計算と呼ばれる特徴的な原価計算の中心的な考え方となっている。当研究では、この仕切原価と二段式標準原価計算の導入の背景とそれらの理念について詳細に検討し、その実行の具体的方法として、現場書記による作業時間のデータの収集方法、個片の原価管理方式、機器の原価管理方式の内容を明らかにした。さらに当研究では、個別生産の比重の高かった玉川事業所に標準原価計算を適用するストープス氏の試案についても、それに対するNECの対応を含めて検討を加えた。 以上の考察から標準原価計算の実態と導入のために準備しなければならない諸点が明らかになった。これらは欧米型の管理会計システムの導入の一つのモデルとして重要と考えられるのである。
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