研究課題
基盤研究(B)
1. K3曲面に作用する有限群と散在型有限単純群の一つであるMathieu群は関係があることが知られていたが、証明は有限群論の深い結果が用いられており、より直接的な証明が問題であった。この研究において、階数24の特別な格子であるNiemeier格子の分類理論を用いて、この結果の簡単で新しい証明と視点を与えた。2. K3曲面の大切な例の一つにKummer曲面があげられる。Kummer曲面は19世紀に集中的に研究され、多くの対称性をもち、その自己同型群は無限群であることも知られていた。しかしながら19世紀後半にF.Kleinが提出した、Kummer曲面の自己同型の生成元を求める問題は残されたままであった。この研究において階数24の特別な格子Leech格子の幾何学を用いて、Kummer曲面のピカール格子の直行群の基本領域を計算した。このことを用いて、上記の問題、すなわちKummer曲面の自己同型群の生成元を与える問題に最終的な解決を与えた。3. K3曲面のモジュライ空間はIV型有界対称領域の算術的部分群による商空間と同一視できる。最近R.Borcherdsが構成したIV型有界対称領域上の保型形式を用いてK3曲面のモジュライ空間上の重さが小さい尖点形式の構成を行なった。このことはモジュライ空間の基本的不変量である小平次元の計算に道を開く意義がある。
すべて その他
すべて 文献書誌 (7件)