研究概要 |
今年度中のおもな成果は,2次元球面上に指定したn+1点から出発するコードのラックについての構造定理が原理的に完成したことである.これは球面ブレイド群の共役公式として書くことがでる.また,随伴群の中心の生成元が確定できた.さらに,一般の曲面上のコードのラックについても,それらの随伴群について一定の知見が得られた.これらの成果については現在,論文を準備中である.また上記成果はレフシェツ・ファイバー空間のモノドロミーの研究とつながっており,今後その方向に研究を展開させる計画である. 今年度は国内外の他の研究分野との連絡が活発であった.すなわち,4次元シンプレクティック多様体論との意外な関連が生まれたことである.それは,ドナルドソンとゴンプにより,4次元シンプレクティック多様体の「自然な」位相的下部構造がレフシェツ・ファイバー空間であることが確立されたことよる.研究代表者のレフシェツ・ファイバー空間の研究に関する問い合わせの電子メールが,ゴンプやフィントゥシェルをはじめ,カリフォルニア大学やオックスフォード大学から多く寄せられた.これらの中で,約20前の,コロンビア大学に提出されたチャキリスの博士論文が,上に述べた随伴群の中心の生成元と密接な関連をもつことが明らかになったので,今後,その方面も追及したい. また,本科研費により,「低次元トポロジーとラック」という研究集会を平成10年9月21日,22日の両日,東京大学数理科学研究科において開催した.約50名の参加者があり,盛況であった.
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