研究課題/領域番号 |
10440029
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日野 正訓 京都大学, 大学院・情報学研究科, 講師 (40303888)
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研究分担者 |
高橋 陽一郎 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (20033889)
木上 淳 京都大学, 大学院・情報学研究科, 教授 (90202035)
熊谷 隆 京都大学, 大学院・情報学研究科, 助教授 (90234509)
篠田 正人 奈良女子大学, 理学部, 講師 (50271044)
松本 裕行 名古屋大学, 情報文化学部・社会システム情報学科, 助教授 (00190538)
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キーワード | フラクタル / 拡散過程 / 確率過程 / マルチフラクタル / ハウスドルフ次元 / 固有値分布 / 熱核 / 極限定理 |
研究概要 |
本研究を遂行する中で、以下の新たな知見が得られた。 1.フラクタル上の自己共役作用素のスペクトルの解析:自己相似な測度をベースにする拡散過程において、測度の自己相似性が一般に拡散過程のスケールとマッチしない場合に熱核のshort time評価を研究した。測度の自己相似性と拡散過程のスケールがマッチする場合(ブラウン運動など)は熱核の対角成分がtのべき乗の形の点によらない評価を持つが、マッチしない場合は熱核の漸近挙動が点に大きく依存し、マルチフラクタルが現れてくる。今回の研究では有限分岐的フラクタルの場合にこれらのマルチフラクタルの次元を求めることに成功し、現在論文を執筆中である。 2.フラクタル上の拡散過程の性質:拡散過程が再帰的である時、時刻tまでのパスの軌跡の(ハウスドルフ)測度についてt→∞での重複対数型の極限定理を得た(結果自体は昨年度得たものであるが、証明に不備があったものを改良した)。この結果から、再帰的な場合には確率1でパスがフラクタルのまわりを均等に覆っていくような時間の部分列をとることが出来ると分かる。現在R.Bass氏と共著の論文にまとめ、雑誌に掲載予定である。 3.ランダムフラクタル上の確率過程の研究:Random recursive Sierpinski gasketと呼ばれる空間的な対称性のないランダムフラクタルの上の拡散過程について、熱核のt→0の漸近挙動に重複対数分の振動が現れることが証明でき、現在Hambly氏と共著の論文にまとめている。ランダムフラクタルの一つのモデルにおいてdetermisticな場合以上の振動が起こることは、ランダムフラクタルにおける熱の伝導の濃淡を知るうえでの確かな足がかりである。
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