研究概要 |
X上の原始語全体の集合Q(X)が文脈自由言語になるかどうかという問題は未解決であるが,この問題に関連する種々の言語の決定問題の研究を行った.X上の語uに対して,ある自然数iとX上の原始語vが存在してu=v^iとなるときroot(u)=vと定義する.さらに,X上の言語Lに対してroot(L)={root(u)|u∈L}と定義する.このとき,Lが正規言語あるいは文脈自由言語ならば,root(L)が有限になるかどうかは決定可能である.Lが正規言語のときには,root(L)が正規になるかどうかという問題も決定可能である.しかしながら,Lが文脈自由言語のときは,root(L)が文脈自由あるいは正規になるかどうかを決定する問題は決定不能である.さらに,Lが原始語のみから構成されているかどうかを決定する問題はLが正規言語のときには決定可能であるが,Lが文脈自由言語のときには決定不能である.次に,言語Lに対してdeg(L)={i|q ∈ Q(X),q^i∈L}と定義する.deg(L)が有限であるかどうかを決定する問題は,Lが正規言語のときは決定可能であるが,Lが文脈自由言語のときは決定不能である.語u=a_1 a_2…a_r (a_i ∈X)に対してu^R=a_r…a_2a_1と定義する.u=u^Rのとき,uを回文とよぶ.このとき「回文のみから構成されている稠密な文脈自由言語が存在するか?」という問題に対しては,そのような言語は存在しないことが示されると同時に,一般にLが回文のみから構成される無限文脈自由言語の場合には,deg(L)は概周期的であることも示された. 以上の結果はおもに研究代表者の伊藤正美,分担者の勝良昌司とハンガリーEotovos大学のS.Horvathの共同研究の結果得られたものである.これらの研究の他に,研究代表者とハンガリーSzeged大学のB.Imrehとの共同研究として得られた,可換な非決定性有向オートマトンが受理する種々の言語のクラス間の包含関係の決定およびオートマトンの星型積の研究がある.
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