研究概要 |
平成12年度におもに行った研究は,ある種のペトリネット言語の研究である.A=(P,T,δ,μ_0)を正値初期マーキングμ_0をもつペトリネットとする.Aが受理するT上の言語をL(A)={u:∀u'(u=u'u",u',u"∈T^*,u"∈T^+),δ(μ_0,u'):正値,〓≠δ(μ_0,u'):非正値}と定義すると,あきらかにL(A)はプレフィックス・コードになる.問題は,如何なるときにL(A)が極大プレフィックス・コードになり,また如何なる構造をもつかである.あるペトリネットAに対してC=L(A)となるプレフィックス・コードCをCPN言語とよぶ.さらにCが極大プレフィックス・コードであるときmCPN言語とよぶ.前年度の研究では,C^2がmCPN言語ならばCは極大ブロック・コードであることが判明した.本年度の研究では,この結果の一般化をこころみ以下のような結果が得られた: A,Bを極大プレフィックス・コードとする.もしもABがmCPN言語ならば,A,Bともに極大ブロック・コードである. すべての極大プレフィックス・コードがmCPN言語である訳ではない.mCPN言語のクラスの構造が完全に解明された訳ではないが,本年度の研究によりmCPN言語の多くの性質が得られた.次に,CPN言語のクラスは正規言語のクラスや文脈自由言語のクラスに含まれる訳ではない.しかしながら,CPN言語のクラスは文脈依存言語のクラスに含まれることの証明が得られた.これらの結果はまだ刊行されていないが,平成13年7月にウィーンで開催される国際会議Developments in Language Theoryに於て招待講演のかたちで発表される.以上の研究のほかに,X上の原始語全体の集合Q(X)が文脈自由言語になるかどうかという問題に関連する種々の言語の決定問題の研究を行った.さらに,非決定性有向オートマトンが受理する種々の言語のクラス間の包含関係の研究を行った.
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