研究分担者 |
猪狩 惺 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50004289)
加藤 順二 東北大学, 大学院・理学研究所, 教授 (80004290)
高野 恭一 神戸大学, 理学部, 教授 (10011678)
井川 満 大阪大学, 大学院・理学研究所, 教授 (80028191)
梶谷 邦彦 筑波大学, 数学系, 教授 (00026262)
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研究概要 |
2階双曲型方程式の基本解はJ,アダマールによって幾何学の手法を用いて構成されたが,P.ギュンター等の1970年代の研究により,特性コノイドの内部が基本解の空隙になっているならば,その双曲型方程式の係数から定まるリーマンの曲率テンソルがある特別な性質をもつことが知られている. 本研究の第一の目的は,曲率テンソルがこの性質をもつような,言い替えれば特性コノイドの内部が基本解の空隙になっているような双曲型方程式を,実際に構成することである.曲率テンソルは計量テンソルの2階までの偏導函数を用いて定義されるが,上記の目的のためには,逆に曲率テンソルを与えて,それから計量を構成する手法が必要である. 研究代表者はまず,曲率テンソル,レヴィチヴィタ接続,ヤコビ場および計量テンソルから定義される4つの行列函数が互いに2つずつ偏微分方程式によって関係づけられていることを見出した.これはM.ベルガーとO.コヴァルスキーの94年の結果を発展させたもので,4つのうちの1つがわかれば偏微分方程式を解くことによって他の3つがわかり,とくに曲率テンソルから計量テンソルが得られるという結果である. 問題となるのは行列を未知函数とする1階線形,2階線形,および1階非線形の3種類の偏微分方程式で,オイラーのヴェクトル場を用いて書かれ,原点ではすべての方向に退化している.そこで無限回微分可能な函数族における偏微分方程式の一般論を適用してこれらの局所可解性を調べ,さらに,計量テンソル,その行列式の任意の冪,および逆行列のテイラー級数を曲率テンソルとその共変微分を用いて表現する公式を幾つか導いた.とくに2次の非線形項をもつ1階半線形方程式の解の展開式が新しい結果である.
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