研究分担者 |
足立 匡義 神戸大学, 理学部, 講師 (30281158)
福山 克司 神戸大学, 理学部, 助教授 (60218956)
樋口 保成 神戸大学, 理学部, 教授 (60112075)
菱田 俊明 新潟大学, 工学部, 講師 (60257243)
渡邉 清 神戸大学, 理学部, 助教授 (60091245)
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研究概要 |
代表者宮川は全空間と半空間において非圧縮粘性流体の方程式の解の時空漸近形を考察し,空間無限遠方である減衰条件を満たす解について,それがガウス型関数を用いて漸近展開出来ることを示した.またこの結果を応用して,一般の弱解に対してエネルギー減衰率の下限の存在を示し,その下限を越える減衰率を持つ解は,必然的にある種の対称性を持つこと,またその対称性の形は全空間における流れと半空間における流れとでは異なることを顕わに示した. さらに定常流に対しては,流れの無限遠での減衰度が物体に及ぼす影響を考察し,物体に働く抗力がゼロになる減衰度の厳密な値を導出した.分担者菱田は回転する物体の周りの流れを記述する方程式を扱い,エネルギー有限な関数のクラスで線形化作用素の摂動理論を構成し,それを用いて,任意の初期値に対して時間局所解が存在することを示した.しかし通常の流体の方程式の場合とは異なり,例えば小さな初期値に対する時間大域解の存在を示すことは出来なかった.時間大域解の存在や,上記とは異なる関数のクラスにおける解の構成等は,今後の重要な課題である.このことと関連して,上記の線形化作用素の様々な関数空間におけるスペクトル解析の実行が必要になるが,この課題も未解決のままである.分担者足立は類似の構造を持つ量子多体系のハミルトニアンに対してスペクトル解析を実行し,この種の系の散乱理論の数学的基礎を確立した.この結果は量子多体系の散乱理論において画期的なもので,特に荷電粒子と非荷電粒子が混在する系を初めて考察することに成功したことは特筆に値するが,しかし,その手法を改変して上記の線形化作用素を扱うことにはまだ成功していない. 分担者福山は流体運動の統計的研究に着手する前段階として,間隙三角級数の収束に関する確率論的問題を扱い,通常の中心極限定理とは異なった型の極限定理をいくつか得た.この研究で注目に値するのは,級数の種々の総和法に対応する離散力学系のゆらぎの解析において,正規分布でない確率分布が極限分布として得られることで,その結果と手法は,流体運動に見られるゆらぎの統計的性質の時間発展の解析に貴重な示唆を与えるものである.
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