研究課題/領域番号 |
10440056
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
浦川 肇 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (50022679)
|
研究分担者 |
伊藤 仁一 熊本大学, 教育学部, 助教授 (20193493)
岡田 正巳 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (00152314)
会田 茂樹 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (90222455)
内田 興二 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (20004294)
麻生 透 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (00111352)
|
キーワード | 離散ラプラシアン / 第1固有値 / ディリクレ問題 / バルタの定理 / ファーベル・クラーンの定理 / 調和射影 / グラフ / グリーン核 |
研究概要 |
平成10年度においては、次のような成果を得た。 (1) リーマン多様体内の有界領域のデリィクレ問題の第1固有値の最もシャープな評価を与える定理として、バルタの定理が知られている。この研究では、このバルタの定理がグラフの場合にどうなるかを調べ、やはり同様の定理がグラフでも成り立つことを示し、離散的バルタの定理を与えた。この応用として、グラフの離散ラプラシアンの距離球の第1固有値のベストな評価を与える公式を得た。さらにこの公式の応用として、無限グラフのスペクトルの下限の評価や任意の有限グラフの第i固有値の上限を評価する公式が得られることを示した。 (2) ユークリッド空間内の有界領域の第1固有値については、ファーベル・クラーンの定理が知られている。これは同じ体積をもつ有界領域の中で、円の第1固有値がもっとも小さくなり、かつそのときに限る、というものである。この定理を離散化してグラフの場合に考察した。すなわち、境界付き有限グラフの第1固有値を考える。これについて、辺の個数がm個の境界付き有限グラフを考えると、これらのうちで、境界点が1点でただ1つの境界辺もつ線状グラフL_mの第1固有値が最も小さくなり、かつそのときに限ることを示した。 (3) リーマン多様体の間の調和射影(harmonic morphism)は、調和写像の例を広範に与えるものとして、重要な概念であることが知られている。本研究では、調和射影のグラフ版を考え、同様の概念を提示した。さらに任意の二つのグラフの間の写像がいつ調和射影になるか、その必要十分条件を与え、この判定条件を使ってたくさんの調和射影の例を構成した。さらに、このような調和射影の位相とラプラシアンについて解析し、調和射影のドメイン・グラフとターゲット・グラフについて、それらの成り立つベッチ数の関係式、及びグリーン核の関係式を得た。この応用として、グリーン核のシャープな評価を得た。
|