研究概要 |
(g,n)型のリーマン面の正則族(M,π,S)はタイヒミュラー空間T_<(g,n)>の中に表現することができる.すなわち,底空間Sの普遍被覆をω:S^^〜→Sに対し,正則写像Φ:S^^〜→T_<(g,n)>が存在して,任意の点γ∈S^^〜上のリーマン面X_<ω(γ)>=π^<-1>(ω(γ))はΦ(γ)の表すリーマン面と双正則同値になる.つまり,Φ(γ)=[X_<ω(γ)>,Σ_<ω(γ)>]となる.ここで,Σ_<ω(γ)>はリーマン面X_<ω(γ)>のマーキングである. 底空間Sの基本群をπ_1(S,t_0)とし,タイヒミュラー・モデュラー群(写像類群)をMod_<(g,n)>とするとき,表現写像Φは群の準同型写像(モノドロミー写像)Φ_*:π_1(S,t_0)→Mod_<(g,n)>を定める. 本研究の目的は,モノドロミーΦ_*(γ)∈Mod_<(g,n)>の分類である.得られた主結果は,ある種の正則属に対して,Φ_*(γ)のBersとThurstonによる分類の型を閉曲線γの幾何的な情報から完全に決定できるというこである.この方面の先駆的な研究としては,Kraの1981年のものがあり,正則族(S×S\Δ,π,S)に対して,Φ_*(γ)の型をγの幾何的な情報から完全に決定した.ただし,ΔはS×Sの対角線集合で,πは自然な射影である.本研究では,特に次の2つの重要な正則族について考察した.一つはM={(x,y,z)|x,y,z∈S,x≠y,y≠z,z≠x}とするとき,(M,π,S×S\Δ)であるり,γを組み紐群の言葉で述べて,Φ_*(γ)の分類がなされた.これは,上記のKraの場合の拡張になっており,またその結果の別証明を与えるものである.もう一つは,小平曲面から定まる正則族であり,これはKraの結果の応用になっている.
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