研究課題
基盤研究(B)
イオンガイド法は1980年代に提案された技術で、核反応生成物をHeガスセル中で一価のイオン状態で熱化し、ガスの流れによって真空領域に引き出し捕集する技術である。元素の化学的性質によらず、高速に反応物を捕集できることから、不安定原子核の研究に広く用いられてきた。一方、イオンガイド法は次の三つの本質的な弱点があることがわかってきた。1)生成強度が弱いこと(効率が良くない)、2)ビームの質(エミッタンス)が悪い、3)プラズマ効果と呼ばれる一次ビームによるイオンのトラッピング、である。この内2)については我々が1990年代前半に開発したSPIG(高周波六重極イオンビームガイド)によって大幅に改善されることが認められ、標準技術となっている。本研究では、1)および3)を解決するために、高周波イオンガイド法を用い、ビーム破砕核分離器と組み合わせる方法をとるための基礎技術の開発を行った。従来のイオンガイド法では、ガスの流れだけによってイオンを輸送していたためセルの大きさとして1cm程度しか実用にならなかった。高周波イオンガイドではイオンを電場の制御下に置くので、2mもの厚さのガスを用いることができる。これによってガスの停止能力ひいては有効ターゲット厚を100倍以上増加させることができる。この大きな停止能(5MeV/u)は、ビーム破砕核分離器からの高速イオンをも受容できることになり、ここではもはや一次ビームはガスを照射しないのでプラズマ効果問題も軽減される。本研究の結果、ガス中での直流+高周波電場によるイオンの高効率輸送が確認された。これは、従来のイオンガイド法の性能を大幅に上げるばかりでなく、ビーム破砕核分離器から得られる高エネルギー不安定核イオンの低速ビーム実験への応用の道を開く。当初予定していた磁場を用いる方法は、本研究の成果を基に、さらなるガスの有効厚の増加方法として有効である。
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