研究課題
基盤研究(B)
極低エミタンス電子ビームの生成・保存は第3世代放射光源(SOR)・自由電子レーザー(FEL)・超高エネルギー電子・陽電子線型加速器(LC)等にとって必要不可欠の技術である。本研究の目的はこれらの電子ビームのエミタンスを直接測定する高性能モニターの開発にある。具体的目標として高エネルギー加速器研究機構で開発されているATF(Accelerator Test Facility)ダンピング・リングのビームを診断する事を念頭に置いている。この研究の最も重要なポイントは(1)所定の性能を持つレーザー光標的を実現し、(2)システムとして加速器に組込む事、にある。我々はビームウエストω_ο=12-15μm、フィネスF=321を持つ光共振器を開発する事に成功した。この性能は当初の目標を十分達成していると判断し、製作した光標的ATF電子ビーム内に組み込み、実際のエミタンスを実測する事にした。この結果、ATFビームサイズはσ_b=9.8±1.0μmであり、ほぼ設計値通りのビームサイズ(垂直)を有している事が判明した。なお測定されたコンプトン散乱光はエネルギースペクトルだけではなくその絶対的カウント数も誤差の範囲内で予想と一致した。これにより、このATFダンピングリングはこのエネルギー帯の電子リングとして世界最小のエミタンスを有する事を実証した。その後共振器に対して様々な改良を加えた後、再度ATF電子ビームのエミタンスを測定した。この測定の主たる目的は、極低エミタンス電子ビームに存すると予言されるToucheck効果によるビームサイズの増大である。以上により本研究は当初の目的を完全に達成する事が出来た。
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