本研究の目的は、半導体受光素子の一種であるアバランシェフォトダイオード(APD)を用いたシンチレーティングファイバー荷電粒子飛跡検出器を試作し、その性能評価を行うことである。特に、一つのパッケージの中に受光面1.0〜1.5 mm φの小さなAPDセルが多数集積されたアレイ型APDを用いて、シンチレーティングファイバー光をコンパクトに読み出すことに重点を置く。研究計画の初年度となる本年は、市販のAPD素子の中からシンチレーティングファイバーの微弱光の検出に最も適した素子を選択し、一つのパッケージあたり16素子からなるAPDアレイを作製した。素子の選択にあたっては、市販のAPDの中からシンチレーティングファイバーの発光波長領域(530 nm近傍)の光に対して70%以上の量子効率を持つものを種々選択し、それらに対してベーター線通過時のシンチレーティングファイバー光の検出性能の評価を行った上で、最適のものを選んだ。評価したAPD素子は、(1)浜松ホトニクス製S5343、(2)同社製S5343SPL、(3)松定プレシジョン製M2329、(4)Advanced Photonix製197-70-74-520の4種である。これらのAPD素子に外径0.75mm、長さ40cmの3HF型シンチレーティングファイバーを取り付け、そのファイバーをベーター線が通過する際のSN比および荷電粒子検出効率を測定した。各素子とも、-40℃まで冷却することによってSN比が20以上に達し、荷電粒子検出効率は98%を上回った。性能評価の結果、S5343が最も低ノイズであることが分かったので、製作したAPDアレイにはS5343と同特性の素子を用いた。目下、APDアレイ1個当たりに16本のシンチレーティングファイバーを取り付けた型の荷電粒子飛跡検出器を試作しているところである。
|