今年度得られた主な成果は次の3点である。 1、本研究のために開発したアバランシェフォトダイオード(APD)で、3m長のシンチレーティング・ファイバー(直径0.75mm)に^<90>Srのβ線を照射したときの発光を読み出し、荷電粒子検出器としての性能評価を行った。その結果、APDを-40℃以下に冷却することによってSN比が60以上に達し、荷電粒子検出効率は99%を上回った。特に、-50℃で検出効率のバイアス電圧依存性を測定したところ、高検出効率のプラトーの幅が約4Vに達した。このような荷電粒子検出器を実際の素粒子実験において実用に供する場合、直径0.75mm、長さ3mというファイバーのサイズは、要求される位置測定精度や測定器の大きさなどの観点から、ほとんどの実験に十分対処できるものである。 2、製作した各APD素子について、-50℃に冷却した状態でバイアス電圧特性を測定した結果、ブレークダウン電圧の素子毎のばらつきが1.5V程度となり、上記の検出効率におけるプラトーの範囲内に十分納まることが分かった。このことは、このAPDアレイを用いた検出器が単一のバイアス電圧で制御可能であることを保証する。 3、APDの信号増幅用前置増幅回路の改良を行った。近年の高輝度粒子加速器を用いた素粒子実験では、検出器の時間分解能を向上させるため、出力信号の立ち上がり時間を十分短くする必要がある。今回の改良の結果、4mm×3mm×0.6mmサイズのチップの中に高感度・低雑音の増幅回路が32個入った型の集積回路素子を用いて、増幅率100mv/fCの高感度を保ちながら、立ち上がり時間を100nsまで短縮することができた。
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