半導体微細構造中の1光子禁制励起子のフェムト秒ダイナミックスとその波動関数の制御

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10440088
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 南 不二雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30200083)
• 研究分担者: 黒田 隆 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (00272659)
• キーワード: コヒーレント制御 / フェムト秒光パルス / 2光子散乱現象 / 2p励起子 / 量子ビート / 位相間和 / ZnSe薄膜

研究概要

新たに開発したフェーズロックされたフェムト秒パルス対を用いた2パルス干渉法と共鳴2光子散乱法を組み合わせることにより、半導体中の1光子禁制励起状態の緩和過程を調べるための新しい分光法を開発した。この方法を用いて、半導体薄膜ZnSe中の1光子禁制励起子である2P励起子の電子状態、およびその動的挙動を調べた。その結果、2P励起子分極もフェムト秒レーザー光によってコヒーレント制御が可能であることが判明した。また、コヒーレント制御が可能な時間より、2P励起子状態の位相緩和時間は2ps程度であることが判明した。また、パルス対により作られた2P励起子分極間の干渉形状の減衰部分には振動構造(量子ビート)が乗っていることが分かった。このことは、この系では、GaAs基板とZnSc薄膜との格子不整合により、励起子準位はエネルギーが接近した2つの(ヘビーホール、ライトホール)準位に分裂しており、振動の周期によりこの2つの励起子のエネルギー差は〜2meVであることを示している。また、パルス対の2つのパルス光の偏光を選んで相対角をつけることにより、2P励起子状態の波動関数の形状に関する情報を得ることができた。実験結果を理論的考察するにより、2P励起子状態の波動関数にはd関数的、s関数的なものが存在し、ヘビーホール励起子はs的、ライトホール励起子はd的と互いに異なる対称性の波動関数に属していることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] T.Kuroda,F.Minami,K.Inoue,A.V.Baranov: "Resonant luminescence in semiconductor quantum dots under two-photon excitation" Phys.Stat.Solidi(b). 206. 463-468 (1998)
• [文献書誌] T.Kuroda,F.Minami,K.Inoue,A.V.Baranov: "Accumulated photon echo in semiconductor microcrystalline quantum dots" Phys.Rev.B.57. R2077-R2080 (1998)
• [文献書誌] K.Akimoto,Y.Tahashi,S.Koshihara,F.Minami,Y.Tokura,T.Koda: "Ultrafast dynamics of reversibly photoinduced neutral-ionic transition in tetrathiafulvalene-chloranils" Mol.Cryst.Liq.Cryst. 314. 101-106 (1998)
• [文献書誌] Y.Mitsumori,M.Mizuno,S.Tanji,T.Kuroda,F.Minami: "Coherent transients involving 2P excitons in ZnSe" J.Lumin.76 & 77. 113-116 (1998)
• [文献書誌] Y.Mitsumori,T.Kuroda,F.Minami,A.Hasegawa: "Quantum interference effect in linear and nonlinear optical processes in GaSe" J.Lumin.76 & 77. 72-75 (1998)
• [文献書誌] H.Ito,T.Takano,F.Minami,S.Nagao,H.Gotoh: "Type-II photoluminescence from GaP/AIP/GaP quantum wells under hydrostatic pressure" Phys.Stat.Solidi(b). 211. 63-67 (1999)
• [文献書誌] Y.Mitsumori,T.Kuroda,F.Minami: "Coherent control of the 2P exciton polarization in ZnSe" Proc.24th Int.Conf.of Semicond.Phys.(in print).