本研究は、四面体分子結晶SnI_4の超高圧・低温下の構造物性研究と類似分子結晶のSnBr_4の構造物性研究を目的とした。とくに前者では、(1)アモルファス状態から60GPaで結晶化して現れる分子解離相の結晶構造決定、(2)超伝導転移温度測定実験が80GPa以上の圧力で示唆する構造相転移の検証を含む相平衡図の作成、を研究対象にした。これには、100GPaの超高圧力、10Kの低温の複合極端条件で放射光X線回折実験を行うことができる装置を開発し、実験技術を確立する必要があった。そのための二つの主要な装置、低温・高圧多結晶X線回折実験装置とルビー蛍光顕微測光装置を計画どおり初年度に完成した。 本年度は、大型放射光施設SPring-8に導入された同じシステムを用いて、放射光X線回折実験を行った。最高18K、89GPaの複合極端条件を実現た。(1)については、室温で60GPaにおいて結晶化するアモルファス相が、18Kでは80GPaまで存在し、アモルファス-分子解離結晶相転移に熱活性化過程が重要であることが判明した。この分子解離結晶相の構造は、置換fcc型無秩序合金のそれと同じであることを明らかにした。(2)はT>18Kの条件では構造相転移が無いことを示した。さらに、18K<T<300K、latm<P<89GPaの領域における相平衡関係と結晶構造を明らかにした。また、過去のメスバウアー低温実験の結果を再解釈する必要があることを指摘した。SnBr_4については、3GPa<P<9GPaにおける新しい結晶構造を決定した。P>9GPaで起きる結晶構造の無秩序は、SnI_4のそれとは全く異なるプロセスで進むことが分かった。 以上の結果は、1999年8月に開かれたIUCr国際結晶連合会議、9月の物理学会ならびに11月の高圧討論会で発表した。
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