研究概要 |
本研究の目的は,表面光第二高調波発生(SHG)分光法を用いて表面電子状態を詳細に調べることである.以下に本研究で得られた成果を列挙する. ガラス/Au界面のSHGの励起光子エネルギー依存性 ガラス上にAu膜(100nm)を蒸着し,その界面から発生するSHGの励起光子エネルギー依存性を観測した.その結果1.25eVと2.5eVに鋭いピークが観測された.これらのピークは同じ準位における1光子共鳴と2光子共鳴であり,界面の電子状態に共鳴している可能性が高い. GaAs(001)のSHGの励起光子エネルギー依存性 GaAs(001)酸化表面からのSHGの励起光子エネルギー依存性を観測し,新たな表面電子状態を発見した.観測した励起光子エネルギー依存性では,hω=1.45eV付近に鋭いピークが見られた.このピークの起源は,バルクのバンド構造が表面のボンドの歪みにより,わずかにシフトしてできた表面電子状態間の電子遷移であると考えられる. 光触媒TiO_2表面へのUV光照射によるSHスペクトルの変化 水蒸気中に封入したルチル型TiO_2単結晶(110)表面にUV光を照射した時のSH光強度の共鳴増強のプロファイルが,照射前のそれと異なることを見いだした.このことは光照射時の光触媒が非照射時とは異なった電子状態を持つことを示唆している. 金属超薄膜作成用真空装置の整備 3連の金属蒸着装置を購入し既存の真空装置に装着し稼動させた.これにより金属多層超薄膜の作成が可能になった. 短波長励起光によるSHG観測システムの構築 紫外域のフィルター,特殊仕様の光電子増倍管等を用いることで,今まで励起光で1eVから2eVまで測定可能であったSHG観測システムの上限エネルギーを励起光で3eVまで上げた.これによりSH光で6eVまでの掃引が可能となり広いのエネルギー領域をカバーできるようになった.
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