本研究の目的は、表面光第二高調波発生(SHG)分光法を用い、フェルミ準位から数eV以内の表面電子状態を詳細に調べて、表面反応の進行や表面の性質とその表面電子状態およびその変逸との関係を調べ、それを以って表面現象を理解する考え方を確立することである。補助的な方法としてラマン分光法を用い、表面界面の振動分光も行った。対象物質は、(1)触媒系、(2)金属系、(3)半導体系であった。以下各項目について成果を要約する。 (1)光触媒ルチル型二酸化チタン(110)においては表面バンドギャップがバルクのバンドギャップ(3.02eV)より高いエネルギー(3.4eV)にあることを明らかにし、この方法でわかる表面の電子状態の波動関数が入射光子エネルギーにより著しく変化する事を見出した。また、光触媒活性発現時にあたると考えられる紫外光(3.49eV)照射下では表面電子準位が高エネルギー側にシフトすることを見い出した。アナターゼ型の二酸化チタンTiO_2(101)面についても同様の成果を得た。また、Ziegler-Natta触媒に関しては、α-TiCl_3顆粒の格子振動エッジモード(224cm^<-1>)が触媒活性と相関していることを見い出した。 (2)ガラス面やNaCl(100)面上のAuの薄膜の電子準位共鳴を探索した。プラズモン共鳴以外にAu(111)面の電子準位共鳴、Au(100)面の電子準位共鳴と思われるピークが見られ、金属膜が成長して行くにつれ、表面電子準位が変逸していく様子が観測できた。 (3)Ge(111)/熱酸化GeO_2膜界面の新しい電子準位をhω=1.17eV付近に発見した。この共鳴は1光子共鳴で、自然酸化膜との界面には見られなかった。このエネルギー付近でのSH光強度パターンは熱酸化膜界面と自然酸化膜界面では著しく異なり、これらの界面の電子状態の違いが強く示唆され、GeやSi/Ge混晶の界面の性質を用いた半導体界面材料に関する大きな情報を与えた。
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